地元食材を使ったパン屋をオープンさせる黒川さん夫婦=阿南市新野町

 東京電力福島第1原発事故に伴う放射能汚染を懸念し、2012年に横浜市から阿南市新野町に移住した黒川真太郎さん(54)喜美恵さん(45)夫妻が31日、パン屋「おやつ工房」をオープンさせる。地元食材のパンを関東圏に向けて通信販売したり、作業場の一角で販売したりしてきたが、より多くの人に味わってもらおうと、店舗を設けて週1回、販売することにした。地域への恩返しの思いを込め、住民が集える店に育てる考えだ。

 黒川夫妻のパンは安全・安心を重視しており、地元農家への委託栽培や自家栽培による食材にこだわっている。新野町産のコメを生地に練り込み、目玉の食パンには阿南市産のハチミツを加える。特産のタケノコと豚肉を味付けした具が入った「ぶたパン」、季節の農産物を使う創作パンなどもある。

 子どもが気軽に立ち寄れるよう価格は1個120~350円に設定。飲食スペースも備えた。自家栽培の野菜を販売していた「彩魁(さいかい)企画」も併設する。

 店舗と工房は、町内の別の場所から8月に移り住んだ新野町東山の自宅の車庫(約30平方メートル)と納屋(約40平方メートル)を改装した。緑が豊かな周囲の環境になじむよう、外観はログハウス風にした。

 黒川夫妻は、東日本大震災をきっかけに12年6月に子ども2人と移住した。食品の放射能汚染を心配する関東圏の知人らに安心できる商品を届けようと、黒川さんはパン屋で勤務した経験がある喜美恵さんと共同で、コメで作るパンを開発。新野町の作業場でも週1回販売したところ「柔らかくておいしい」と評判となり、食パンは1日60個が完売する人気商品となった。

 震災前から「いつか田舎でパン屋でもやろうか」と話していた2人。移住先を求めて訪れた徳島で住民グループ・新野支援隊と出会い、住居や畑、パンの作業場の確保などでサポートを受けてきた。納屋などがある一戸建ての物件が見つかったため、8月に引っ越しし、念願の店舗を構えることにした。

 夫妻は「横浜で漠然と抱いていた夢が新野で動きだした。ここまで頑張れたのも地域の支えがあったから。店を通して地域を元気にしたい」と意気込んでいる。

 ◇ 

 「おやつ工房」<電070(5511)3151>の所在地は阿南市新野町東山で、新野町と橘町を結ぶ県道の東山トンネルの近く。営業は毎週火曜午前10時~午後5時(売り切れ次第終了)。