ミュージカル映画は登場人物が物語中に突然歌いだす違和感や、どことなく高尚なイメージから敷居の高さを感じて苦手な人もいる。そんな否定的なイメージを一新してくれるのが「アクロス・ザ・ユニバース」(2007年、ジュリー・テイモア監督、ジム・スタージェスなど出演)。往年の英国人気バンド「ビートルズ」の名曲の数々をモチーフにしてミュージカル映画の新境地を開いている。

Motion Picture (C)2007 Revolution Studios Distribution Company, LLC. All Rights Reserved.

 ベトナム戦争下の1960年代の米国が舞台。英国から移り住んだジュードは、マックスと妹ルーシーと知り合う。ジュードはルーシーと恋に落ちるが、ルーシーはマックスが戦争に徴兵されたことで反戦運動にのめり込み、ジュードとルーシーの関係に亀裂が生じていく。

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 時代に翻弄(ほんろう)される若者の群像を、ビートルズの33曲をちりばめながら描いている。物語の浮き沈みに合わせ「愛こそはすべて」や「ヘイ・ジュード」などの名曲が独自のアレンジを施され、役者本人によって歌われていく。各曲の歌詞が登場人物の心情を代弁するように構成されており、役者たちが絶妙のタイミングで歌いだすシーンの高揚感はミュージカル映画ならではの魅力だ。

 監督は、米演劇界の最高峰「トニー賞」のミュージカル演出賞を女性で初受賞したジュリー・テイモア。前衛的な舞台を生み出す独特の感性を映画製作においても随所に注入している。登場人物の心理や精神状態をデフォルメした大胆かつサイケデリックな映像演出が鮮烈な印象を与えており、作品の個性を際立たせている。(記者A)

 【記者A】映像ソフト専門誌編集者、フリーの映画ライターを経て徳島新聞記者を務める。映画関連記事の編集や執筆、インタビュー、ロケ現場の取材などに長年携わり、1年間で365本鑑賞した年もあるなど、映画をこよなく愛する。

 

ブルーレイ版1886円/DVD版1429円(税抜き、発売・販売元 NBCユニバーサル・エンターテイメント)