メチルコバラミンの治験について説明する梶教授=東京都内

メチルコバラミンの治験について説明する梶教授=東京都内

 徳島大大学院医歯薬学研究部の梶龍兒(りゅうじ)教授(神経内科)らの研究グループは7日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の延命効果が期待される薬剤「メチルコバラミン」の治験を、医師主導で始めたと発表した。実用化されれば平均余命を600日以上延長させる可能性があるとしており、梶教授は「新薬開発を実現するためにも、多くの患者に参加してほしい」と呼び掛けている。

 ビタミンB12の一種であるメチルコバラミンの治験は、製薬会社エーザイが約7年間、発症後3年以内のALS患者を対象に実施した例があり、同社は2015年に結果を公表した。重篤な副作用がなかった一方で延命効果もみられなかったが、発症後1年以内の被験者に限れば、600日以上、生存期間または呼吸器装着までの期間が延長することが実証されたとした。

 今回の治験は発症後1年以内のALS患者を対象に、主管施設の徳島大病院を含む全国の19施設で行う予定。適性検査を経た上で、被験者をメチルコバラミン50ミリグラム投与と、プラセボ(偽薬)投与の2グループに分け、それぞれ4カ月間にわたり週2回、筋肉に注射し、症状の進行を比較、検証する。

 被験者数は128人を目標とし、19年9月までに登録してもらう。メチルコバラミンは既存の治療薬との併用が可能。被験者は希望すれば最長で20年3月まで投与が継続され、その場合は本人と家族による注射もできる。

 治験は企業が製品開発を目的に行うケースが一般的で、医師主導による治験は珍しい。徳島大病院が主管施設として実施するのは初めて。17年度から3年間、日本医療研究開発機構(AMED)から3億円の助成を受ける。

 梶教授と、治験を主導する徳島大病院の和泉唯信(ゆいしん)・治験調整医師(神経内科)が7日、東京都内で記者会見し「治験が成功するよう、スタッフ全員で全力で取り組みたい」と意気込みを語った。

 治験に関する問い合わせは同大病院内の事務局<電088(633)9658>。