物干しにビニール袋をつるして乾かす片山さん=上勝町正木

 民家の物干しざおに掛けられ、風に揺れる数枚のビニール袋。上勝町でよく見られる光景の一つだ。水にぬれたビニールはごみの処分費用が高くなるため、町は乾かしてから捨てるよう求めている。「ちょっとの手間で地域の環境と町の財政が良くなると思えば全然苦じゃないよ」と家主は語る。無駄なごみを無くそう―。そんな精神が、この町にしっかりと根付いている。

 町は1998年、ごみの22分別を始めた。収集車を走らせず、各家庭で町内1カ所のごみステーションに持ち込む方式を導入する。2003年には、日本初となるゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)宣言を発表。20年までに焼却、埋め立てごみをゼロにする目標を掲げた。

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 背景にあったのは、当時社会問題となりつつあった環境汚染だ。焼却場から出る煙や焼却灰に含まれる有毒物質ダイオキシンが全国的に問題視され、国は1999年に環境基準を厳格化した。町も小型焼却炉を閉鎖するなどし、ごみ減量化を推し進めた。

 取り組みの結果、町の2018年度のリサイクル率は80・7%(県平均16・6%)に上る。目標の100%には届いていないが、北海道豊浦町(84・8%)、鹿児島県大崎町(83・1%)に次いで全国3位だ。

 リサイクル率を押し上げているのが町全体で取り組むごみの45分別。瓶や紙の色、ビニールや布の汚れ具合、キャップの種類といった細かい部分にまで仕分ける。ごみを細分化すると処理費用が安くなったり、品目によっては業者が買い取って町の収益になったりする。ごみ分別は環境だけでなく町の財政にも貢献する。

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 上勝町正木の主婦片山初枝さん(72)宅には、台所や居間、倉庫、庭など、至る場所にごみ袋が置かれている。袋ごとに入れる品目が異なり、家族4人で28分別を実践する。

 袋の中は、ごみとは思えないほどきれいだ。納豆の容器はべたつきがなく、菓子袋には残りかすさえ残っていない。「きれいじゃないとリサイクルできないから」。ほとんどの容器や包装は水洗いをするか、手で汚れを払い落とす。

 「最初は、何でこんな面倒なことせなあかんのと思った。でも10年以上続けていると慣れて、全然手間に思わなくなった」。月日と共に、分別が日常生活の一部になったのは片山さんだけではない。町民に、ごみゼロの意識が芽生えていった。

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 上勝町のゼロ・ウェイスト宣言の目標年である20年を迎えた。町民への広がりを振り返るとともに、目標達成に至らなかった要因、今後の課題を整理する。

 ゼロ・ウェイスト宣言 上勝町が2003年に発表した政策で、20年までに焼却や埋め立て処理される廃棄物(ウェイスト)をゼロにすると掲げた。宣言は、町内焼却炉の撤去、ごみ45分別などの実現につながった。1996年に世界で初めてオーストラリアの首都キャンベラが宣言し、各国で取り組みが広がる。国内では福岡県大木町や熊本県水俣市なども行っている。