徳島県那賀町沢谷の高城山(標高1628メートル)一帯に広がる原生林。そこの主な樹種が広葉樹のブナである。樹齢300年ともいわれる大木が空に向かってそびえ、枝を張り、茂る葉は頭上を覆う。

【闇に浮かぶ】枯れたブナの幹に生えたツキヨタケ。闇の中で蛍光色にばんやりと光る。

 秋の気配が濃くなり、ブナの葉がうっすらと黄色く色づき始めた10月初旬。雨上がりの「ファガスの森」を訪ねた。管理人の平井滋さんとともに森の中を歩き、尾根を目指した。ほのかにキノコの香りが漂ってくる。ブナ林がキノコの季節を迎えたことを伝えている。

 落ち葉に覆われた地面やそこら中にある倒木に目をやると、小さなものから高さ30センチの巨大なものまで、さまざまな色や形のキノコが見られる。

 その中で枯死したブナにびっしり生えたシイタケのようなキノコを見つけた。「おっ、あった。これはツキヨタケじゃ」と平井さん。夜になると光るキノコだという。

 その場所にマーキングして夜に再び訪ねた。暗闇でほのかに光るキノコ。幻想的で不思議な光景だ。「ブナ林は魅力と不思議にあふれとるよ。この森は恵みの森じゃ」と平井さん。その言葉を実感した。

【見分けが困難】色や形、大きさもさまざまなキノコ。見るだけでも楽しい。どの分類に属するのかは顕微鏡レベルで調べることが必要で専門家でも難しいという。図鑑の写真だけで見分けるのは危険で、食用できるかどうかも不明なものも多いため、安易に採取したり口にしない方がいい。
 
 
【群生】倒木にびっしりと生えた小さなキノコ。秋のブナ林の至る所で見られる光景
【独特な形】カリフラワーのような不思議な形をしている県内では珍しいヤマブシタケ。他に同じようなキノコが少なく見分けやすいといわれている。
【昼間のツキヨタケ】重なり合うように生えるツキヨタケ。ヒラタケやシイタケによく似ており、間違えて採取し食べると強い嘔吐や下痢の中毒を起こし死に至ることもある。見るだけにしておきたい。
【ブナの森】太いブナや木々が山肌を覆う。魅力的な場所だが、深く入ると方向を見失いやすいため単独での入山は慎みたい。