アニメ映画「劇場版『鬼滅の刃(きめつのやいば)』 無限列車編」の記録的ヒットに伴い、徳島県特産の中心に竹が刺さった「竹ちくわ」がにわかに注目を集めている。アニメやゲームのキャラクターに扮(ふん)するコスプレを子どもが楽しむ際に、主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)の妹で口に竹をくわえた禰豆子(ねずこ)の衣装の小道具として竹ちくわの竹が使えるというのが理由だ。県内の一部メーカーでは竹ちくわの売り上げが伸びており、予想外の反響を歓迎している。

 

 竹ちくわは、県南部の小松島市の特産品で、直径約1センチ、長さ12センチほどの青竹に魚のすり身を塗り固めて焼き上げた後、竹を抜かずに販売されるのが特徴だ。その歴史は古く「鬼滅の刃」の悪役・鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)が誕生した平安時代には既に存在していたと伝えられ、源義経が平家討伐の道中に小松島に上陸した際に食べてその味を絶賛したという逸話が残っている。県民の間ではおかずや酒のつまみとして親しまれているソウルフードで、同じく県民の「ソウルかんきつ」スダチとしょうゆとの相性は抜群だ。

 禰豆子は無惨によって人を食う鬼に変えられながらも、竹を口にくわえて凶暴性や食欲を抑え、炭治郎と共に鬼を討伐しながら人間に戻れる方法を探すけなげな姿と愛らしい容姿から作中屈指の人気キャラの一人となっている。コスプレ人気も高いことからさまざまな専用衣装が売られているが、子ども用には竹が付属していない物もあることから、手軽に入手できる竹ちくわに目を付ける県民がいたようだ。SNSでは「子どもが禰豆子に変身するのに竹ちくわがバッチリ」「禰豆子のコスプレをしたい人は竹ちくわを買えばいい」といった投稿が相次いでいる。

 

 小松島市の老舗メーカー「谷ちくわ商店」の谷泰志(やすゆき)社長によると、映画公開前の夏ごろから「禰豆子のまねをするから」という理由で竹ちくわを買い求める家族連れの姿が目立ち始め、公開された10月以降はさらに増えている。谷社長は「竹ちくわには細身の竹を使っているので、子どもの口の大きさにはちょうどいいのだろう。竹を使う前には家族でおいしく食べてもらって、小松島伝統の竹ちくわの良さを見直すきっかけにしてくれれば」と期待を込めた。