第1次世界大戦時の板東俘虜(ふりょ)収容所に関する資料を展示している「鳴門市ドイツ館」の2017年度の入館者数が3万1640人に達し、8年ぶりに3万人台を回復した。ベートーベン交響曲「第九」アジア初演100周年(6月1日)への関心の高まりに加え、平和学習での活用を広く情報発信したことが奏功した。
入館者が3万人台になったのは、09年度の3万2693人以来。前年度比9・2%増の伸びとなった。内訳では、県外からの団体客(20人以上)が86・6%増の5679人、ドイツや香港などからの外国人も47・4%増の703人に上り、入館者数を押し上げた。
市は、入館者が過去最低の2万4323人に落ち込んだ13年度、官民による「なると第九」ブランド化プロジェクト推進協議会を発足させ、アジア初演100周年に向けたPRを強化してきた。落語家の桂文枝さんをPR大使に任命したり、都内のイベントで情報発信したりしてきた。
15年度からドイツ館の指定管理者になった市うずしお観光協会も、近隣府県に「平和研修の場」としての活用をPR。松江豊寿(とよひさ)所長の人道的な運営で知られる板東収容所の歴史を学ぼうと、各地の民生委員や人権擁護委員らが訪れるようになっている。
ドイツ館の入館者数は開館翌年の94年度の8万377人をピークに年々減少。10年度以降は7年連続で2万人台にとどまっていた。
ドイツ館の中村誠司統括管理者は「まだ施設の知名度は低い。日独友愛の歴史を広く知ってもらえるよう、今後もPRや誘客に取り組みたい」と話している。
◆鳴門市ドイツ館◆ 1993年10月に旧施設を新築移転し、オープン。姉妹都市の独リューネブルク市庁舎を模した外観が特徴。板東俘虜収容所で発行された新聞「ディ・バラッケ」や音楽会のプログラム、写真など約700点を所蔵している。展示室でこれらの資料や収容所の模型などを紹介し、企画展や講演会も随時開いている。