低予算の製作費ゆえの荒唐無稽な設定とお約束のストーリー-。映画ファンはそうしたツッコミ所満載の映画を愛情を込めて「B級映画」と呼ぶ。そんなB級のノリを本格的に極めたのが「スネーク・フライト」(2006年、デヴィッド・エリス監督、サミュエル・L・ジャクソンら出演)だ。B級映画の定番とも言える動物と飛行機という2大パニック要素を大胆に融合して、1作品で2度楽しめる。

 

 マフィア組織による殺人事件を目撃した青年ショーンはLAの裁判所で証言するため、護衛役のFBI捜査官フリンと共に極秘裏にホノルル発の民間旅客機に搭乗する。しかし、組織はショーンを抹殺すべく、毒ヘビを積み荷として機内に潜り込ませていた。離陸直後、時限式の箱から解き放たれた数千匹の毒ヘビが乗客スペースに続々と侵入し、ショーンら乗員乗客に襲いかかる。

 「なぜ殺害手段が毒ヘビなのか」「どうして数千匹も必要なのか」などの設定上の疑問はさておき。デフォルメ化された登場人物と特殊な設定という、いかにもB級映画らしい軽いノリを貫きながら、作品のクオリティー自体は本格志向に仕上がっている。

 ヘビ嫌いの人は注意が必要かもしれないが、物語は序盤からコブラを筆頭に、ガラガラヘビにブラックマンバ、レインボーボアなどが続々登場する。多種多彩な数千匹の毒ヘビをCG技術も駆使してこだわって再現しており、ヘビ好き垂ぜんの「毒ヘビ博覧会」といった趣だ。

 加えて、飛行中の旅客機という舞台設定は、ひとたびトラブルが起これば逃げ場なしの密室空間と化すスリルの宝庫。極限状態のパニック映画を作りたいなら外れなしのシチュエーションだ。ヘビと飛行機の合わせ技で面白くならないわけがない。

 

 ホラー映画のお約束よろしく、機内のトイレでセックスに興じる若いカップルが最初の犠牲者になるのもご愛敬。傲慢(ごうまん)な中年ビジネスマンがアナコンダにぐるぐる巻きにされて頭から丸呑みされたり、トイレで用を足している男性が股間を噛まれてもだえ死にしたりと、スリルだけでなく、エロスとユーモアを随所に交えながら、阿鼻(あび)叫喚の地獄絵図を作り出す。

 クライマックスで操縦士が死んで程なく、FBI捜査官が「面倒くせえ」とばかりに「一匹残らず放り出してやる!」と大号令の決めぜりふ。拳銃をぶっ放して窓ガラスを破壊し、全てのヘビを空中に追い出す「ちゃぶ台返し」的なパワープレーで、飛行機パニック映画定番のイチかバチかの緊急着陸態勢に突入していく。

 大胆にしてマニアック、荒唐無稽にして痛快。B級映画ならではの醍醐味(だいごみ)を目いっぱい詰め込んで息つく暇もなくストーリーが展開していき、ラストシーンでは絶頂感にも似たカタルシスも味わわせてくれる。たかがB級映画と侮るなかれ。B級映画の一つの到達点がこの作品にある。(記者A)

 【記者A】映像ソフト専門誌編集者、フリーの映画ライターを経て徳島新聞記者を務める。映画関連記事の編集や執筆、インタビュー、ロケ現場の取材などに長年携わり、1年間で365本鑑賞した年もあるなど、映画をこよなく愛する。