鈴木選手から譲り受けたクラブを手にエールを送る健司さん=香川県観音寺市

 日本女子ゴルフツアーで初の賞金女王を狙う東みよし町出身の鈴木愛選手(23)を、父健司さん(49)=同町加茂、飲食店従業員=は特別な思いで見守っている。小中高校時代は付きっきりで指導し、二人三脚で今の土台をつくり上げた。その間、長年続いてきた家業をやめるなど、大きな決断もあった。タイトル獲得が懸かる26日の試合に向け「これまでにやってきたことを出し切って」とエールを送る。 

 鈴木選手は加茂小5年の時にゴルフを始めた。当時国内ツアーで活躍していた宮里藍さんに憧れた妹花奈さん(22)に誘われたのがきっかけだった。

 健司さんは「素人同然」の腕前だったが、プロを目指す娘2人と毎日2時間、一緒に練習。週1回、プロのレッスンも受けさせた。徐々に成果は出て、鈴木選手は県内外の大会で入賞を重ねるようになった。

 大きな決断を迫られたのは、鈴木選手が中学3年の時。ゴルフ部を創設する倉吉北高(鳥取県倉吉市)から特待生として誘われた。健司さんも同部のコーチとして来てほしい、とのことだった。

 3代続く製材店を営んでいた健司さんは半年間悩んだが、最後は「娘の夢をかなえたい」との思いから、店を畳むことにした。

 鳥取に移住後は付きっきりで指導。走り込みやストレッチを重点的に行って体力を強化したほか、毎日ラウンドを重ねてアプローチやパッティングの技術を上げた。

 鈴木選手が高校最後の試合を終えた後には「プロになるなら、これからは自分でやれ」と突き放した。プロの世界で成功するには、人に頼らず自ら考え抜いて力をつける必要があると考えたからだ。

 鈴木選手は高校を卒業した2013年、プロテストに一発合格した。健司さんは「娘は負けず嫌いで言い合いになることもしばしばあった。でもゴルフをやめたいと言ったことは一度もない。私も楽しかった」と振り返る。

 健司さんは両親の介護のため東みよし町に戻り、妻美江さん(46)が東京で娘と2人で暮らしながら、一緒にツアーを回っている。

 健司さんが現地観戦に出向くのは年1、2試合程度だが、試合は全てテレビのCS放送でチェックしている。

 「勝ちたい気持ちが強すぎて結果が出ないときがある。ショットの精度も課題」。言いたいことは少なくないが、口出しはしないと決めている。「おめでとう」「惜しかったな」。電話や無料通信アプリ「LINE」では、短い言葉に思いを込める。

 タイトルの行方が決まる26日午後は、香川県観音寺市の職場で吉報を待つ。「娘がうまくなることが何よりの喜び。タイトルは結果的に取れればいい」。穏やかな表情でそう語った。