2015年10月、徳島市の市道で、警報音を鳴らさずバックしてきたトラックにひかれて視覚障害者の山橋衛二さん=当時(50)=と盲導犬ヴァルデスが死亡した事故で、盲導犬の損害賠償を巡り、所有者の県と運転手側で示談が成立していたことが30日、分かった。県は示談金額を明らかにしていないが、20万円とみられる。交通事故で犠牲になった盲導犬の損害が認められるのは珍しい。
関係者によると、16年5月、運転手に禁錮2年、執行猶予4年の判決が言い渡された刑事裁判後、徳島の盲導犬を育てる会がヴァルデスの社会的価値を認めてもらおうと、運転手側に対して損害賠償を請求するよう県に要望。県は今年4月から示談交渉を進めていた。
ヴァルデスは県が盲導犬訓練所から189万円で購入した。07年に県から山橋さんに貸与され、事故の8日後に引退する予定だった。示談金額は、盲導犬としての稼働残余期間や技能などを考慮して決まったとみられる。県は、ヴァルデスの損害などに対する保険には加入していなかった。
盲導犬を育てる会は「ヴァルデスは長年山橋さんと共に盲導犬の啓発活動に寄与してくれた。示談金額は安い気がするが一つの区切りとなったことは間違いない。これで終わりではなく、全国でバック時の警報音の義務化が進むことを願っている」としている。
盲導犬の事故死を巡っては、10年3月、トラックにはねられて死んだ盲導犬の育成と無償貸与に取り組んでいた名古屋市の財団法人に対し、名古屋地裁が運転手と運送会社に育成費などとして賠償金約290万円の支払いを命じた全国初の判例がある。