吉野川でアユが遡上(そじょう)する時季になると、サギ類が第十堰(ぜき)(石井、上板町)や柿原堰(阿波、吉野川市)に姿を見せる。堰付近に大群が集まる稚アユを狙うためだ。
中でも白くて美しいシラサギはひときわ目立つ。シラサギは羽の白いサギ類の総称。県内ではダイサギ、チュウサギ、コサギ、アマサギの4種が見られ、それぞれ体の大きさ、くちばしや足の色で識別できる。
県内に数多く生息することから、1965年に徳島県の鳥に指定された。県内各地の伝承に登場するハクチョウはシラサギを指すという説もあり、古くから県民に親しまれてきた。
柿原堰でカメラを構えていると、シラサギが次々にやってきた。速い流れの中、細い足でよく立つことができると驚くとともに、くちばしで稚アユを捕らえる器用さに感心する。急流に足を取られて羽をばたつかせたり、うまく稚アユを確保できなかったりする姿も見られ、悪戦苦闘する様子は見ていて飽きない。
懸命にさかのぼるアユと、必死に追うシラサギ。食物連鎖の一場面とはいえ、厳しい自然の中で生き抜く大変さが伝わってくる。