しっくいを塗った白壁の建物が並び、かつては阿波藍の集散地として栄えた美馬市脇町のうだつの町並みを歩いた。1988年に徳島県内で初めて国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選ばれた通りには、古民家、商家を改修したカフェ、サテライトオフィスなどが軒を連ねる。新旧が交わる町並みは、歴史の息づかいが感じられる。

伝統継承へにじむ決意 

ボランティアガイド連絡会 塩田正則会長

 藍染の法被姿で観光客に歴史や建物の特徴を紹介するのは「脇町・うだつの町並みボランティアガイド連絡会」。会長の塩田正則さん(71)は「訪れて良かったと思ってもらえるように心掛けている」と話す。

 観光客に魅力を伝えようと1996年に発足した。案内時に観光客に手渡すのが、町歩きを楽しんでもらおうと2017年に製作した観光マップ。19年には英語版も作り、町並みの商店や飲食店に置いている。

 美馬市脇町の歴史や文化を学ぶウオーキングイベントも企画。県内外の重伝建を訪問し、現地のガイドと意見交換する研修会を年1回実施して研鑚を積む。

 「町並みが好きだから、自分たちにできることをやっていく」。力強い口ぶりに、伝統継承への思いがにじむ。

藍染の法被姿で町並みを案内する連絡会の塩田さん

明治5年建築「森邸」

 1872(明治5)年建築の「森邸」には、2017年から東京の旅行会社など6社が本社やサテライトオフィスを開設している。場所を共有しながら仕事のできる「コワーキング(協働)スペース」があり、併設するカフェは従業員のほか、観光客や地域住民が訪れる。

 木造2階建て延べ約270平方メートル。昔は造り酒屋だったが、14年ごろから空き家になった。地方創生に取り組むG&Cコンサルティング(東京)が県・市の事業で改修。柱や家具の一部はそのまま使われている。カフェではコーヒー、紅茶のほか、つるぎ町の特産・半田そうめんも味わえる。

 駐在する同社の社員、翠大知(みすだいち)さん(27)は「地域住民の温かさに触れられる。町並みで働き、この町が好きになった」と笑顔を見せる。地域に根付いた旧邸に、新たな顔が加わった。

サテライトオフィスやコワーキングスペースを備えた「森邸」

甘酒と米こうじ 新たな特産品に「西野商店」

 町並みの東で農業資材などを販売している西野商店が、甘酒と米こうじ造りに乗り出した。

 取引のあったつるぎ町のこうじ店が、後継者不足で店を閉めようとしていると知り、製法を受け継ぐことにした。

 主に作業を担うのは八木晋作さん(36)。都内の旧築地市場で競り人をしていたが、西野商店を継ぐため28歳で帰県。仕事を手伝いながら、こうじ店で6年半修業を積んだ。学んだことを生かし、店舗北の工場で、地元産の新米だけを使って手作業。甘酒はあっさりした味わいに仕上げている。

 大豆や麦のこうじ、みそ造りも考えている。「地域に根ざしながら、大勢の人に味わってもらいたい」と八木さん。歴史的な町並みに新たな特産が生まれる。

自作の甘酒と米こうじを手にする八木さん

美馬和傘、職人の技光る 市伝統工芸体験館「美来工房」

 市の伝統工芸品の一つが「美馬和傘」。町並みの西にある市伝統工芸体験館「美来(みらい)工房」では、市内外の有志でつくる「美馬和傘製作集団」が和傘作りを受け継いでいる。

 製作技術を後世に伝えようと2011年に発足した。メンバーは8人。日傘、雨傘のほか、ランプシェードや展示用のミニ傘などを作っている。材料の用意から仕上げまで、一貫して手作業にこだわる。

 住友聡代表(61)=脇町北庄=は「真心を込めて丁寧に。一つ一つの作業が出来栄えに影響する」と話す。工程は細かく分けると100を超え、1本の製作に日傘で約3カ月、雨傘で約半年かかるという。

 製作体験も行っており、来場者はメンバーの指導でミニ和傘やランプシェードなどが作れる。

手作業で美馬和傘を作るメンバー