県南の中核都市・阿南市の東南部に位置する椿地区。市中心部から国道を南下し、県道を東に進む。椿川河口付近で二手に分かれ、直進すると情緒あふれる町並みや漁船が並ぶ椿泊町へ。右折すれば四国最東端の地である蒲生田岬へとつながる。雄大な太平洋の景色が、運転の疲れを吹き飛ばし、開放感と爽快感に浸らせてくれるだろう。

自然生かし町おこし 椿ハウス運営の篠原さん

 「とにかく椿のきれいな海が好き。景色は最高」。篠原好貴さん(51)=阿南市日開野町谷田=は魅力に引かれ、椿町内で貸別荘の椿ハウスを運営したり、スタンド・アップ・パドルボード(SUP)が親しめる環境を整えたりして町おこしに努める。

 子どもの頃から、当時住んでいた自宅近くの淡島海岸(畭町)で海水浴を楽しみ、桑野川で釣りをするなど自然と触れ合うことが好きだった。24歳からはサーフィンを始め、県内外の海岸を巡った。

 ある日のドライブの途中、椿町の県道にあった古い別荘に立ち寄った。目の前に広がったのは、漁船や島々が見える椿湾。「この自然をいろんな人と共有したい」と思った。別荘の所有者から譲り受け、2018年に椿ハウス(木造平屋85平方メートル)をオープンさせた。

 19年には、市と連携して椿湾2カ所に「椿SUPパーク」を設けた。「今後も、自然の中で1日中楽しめるようなサービスや場所を作りたい」と意欲を見せる。

椿地区で町おこしに取り組む篠原さん。写真は椿ハウスからの眺め=椿町平松東側

【メモ】

 椿ハウスは1棟貸し切りで1泊2万4000円(税別)から。予約はホームページで受け付けている。椿SUPパークの料金は道具のレンタルを含み13歳以上が3500円(税別)、6~

12歳が2500円から。予約と問い合わせは篠原さんが運営するサステナブル阿南のホームページ、または電話<0884(22)1276>。

貴重なウミガメ産卵地 蒲生田海岸

 アカウミガメの産卵地として県の天然記念物に指定されている蒲生田海岸を訪ねた。「もうそろそろ上陸するころとちゃうか」。ウミガメの上陸や産卵状況を観察し、市に報告している蒲生田地区常会長の漁業岡本雅博さん(58)が砂浜を案内してくれた。「産卵は山際とか砂浜に降りる階段付近が多いな」

 5月に入ると、毎朝足跡がないか双眼鏡などを使って海岸を見渡す。足跡が見つかれば、穴を掘って産卵していないか確認する。2019年は9頭が上陸し、1頭が産卵した。

 6~8月に月1回程度、地元住民は海岸を清掃し、漂着物などを撤去する。「小学生の時から当番で産卵場所を探すなどウミガメと共に育ってきた。上陸できる環境を守りたい」と話す。

 1987年から3年間、蒲生田小学校(休校中)の校長を務めた鎌田武さん(91)=阿南市桑野町西谷=は、ウミガメの魅力を伝える出前授業を幼稚園や小学校などで行っている。校長時代に児童と取り組んだウミガメの観察や人工ふ化の実験を振り返り、自然環境保護の大切さも訴える。「子どもは目を輝かせて聞いてくれる。元気な限り、続けていきたい」と語った。

ウミガメの上陸状況を観察している岡本さん=椿町の蒲生田海岸

水軍拠点、狭い道に名残 椿泊の町並み

 紀伊水道に伸びる燧崎半島の南側に位置する椿泊町は、海と山に挟まれた細長い漁師町だ。江戸時代に徳島藩の海上方として参勤交代などで輸送を担当した阿波水軍の大将、森甚五兵衛の本拠地として栄えた。

 車1台がやっと通れる狭い道が東西約2キロにわたって続く。狭小なS字や直角に曲がった急カーブが点在し、思わずハンドルを握る手に力がこもる。急カーブは容易に敵の侵入を許さないための工夫であり、城下町の名残を感じられる。

 1991年12月には、皇太子だった天皇陛下が、専門の「中世の海運」を研究するため視察に訪れた。

 毎年9月に行われるのが、森家の氏神である佐田神社の例大祭「だらだら祭り」。漁船が海上をパレードし、みこしが町並みを練り歩く。かつて1カ月近く続いていたことが名前の由来だという。

 佐田神社の石段を上がると椿泊町の町並みを一望できる。坂田敏郎宮司(69)は「以前より対向場所が増えたとはいえ難所も多い。訪れるときはくれぐれも運転には気を付けてほしい」と話す。

車1台がやっと通れる狭い道が続く町並み=椿泊町

はも天丼味わって「かもだカフェ」

 椿町船瀬のかもだ岬温泉保養センターには、椿湾が一望できる露天風呂などのほか、地元の海の幸を使った料理を提供している「かもだカフェ」がある。

 2010年にオープンした。営業していた飲食店が撤退したため、センターが地元の常会や婦人会などに呼び掛け、運営を担う協議会が設立された。

 人気メニューは県産のハモを使った「はも天丼」。しょうゆや砂糖などを混ぜた特製ソースをかけて食べると、黄色い衣のサクサクした食感が口の中に広がり、ハモの柔らかい身がより引き立てられる。地元で取れたカボチャやサツマイモの天ぷらも添えられており、ソースと良く合う。

 はも天丼は、みそ汁付きで950円(税込み)。サラダや煮物などがついた定食は1100円(同)。カフェ責任者の山田郁夫さん(68)=椿町栄野=は「はも天丼を食べられる所は少ないので、一度食べてみてほしい」と話している。

 シラスを使った「生しらす丼」や「釜あげしらす丼」もある。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、センターは臨時休業しており、6月にも再開を予定している。

かもだカフェで提供している「はも天丼」=椿町船瀬