今春、旧阿波市役所だった建物に市阿波地域交流センターが完成し、新たな交流拠点ができた阿波町。毎年春には自宅の庭を開放する「オープンガーデン」が開かれ、地域全体が華やかな雰囲気に包まれる。自家製野菜を使ったレストランが誕生するなど食も楽しめる。自然あふれる町を歩けば、色とりどりの花々に出合えるだろう。

趣向凝らした庭公開「阿波ガーデンクラブ」

 5月下旬、阿波町と吉野川市山川町を結ぶ瀬詰大橋に続く道路の脇に、薄紫のキャットミントが揺れていた。阿波市といえば「花のまち」というイメージを持つ人も多いのではないか。阿波市のガーデニング愛好家でつくる「阿波ガーデンクラブ」が、その地域づくりを支えている。

 クラブは2012年10月に結成し、会員11人。月1回の定例会のほか、県外の庭の視察をしたり、公共スペースの草花を手入れしたりしている。

 結成翌年から、クラブの会員を中心にして個人宅の庭を一般公開する「オープンガーデン」を毎年開き、多い年には県内外から5千人が詰め掛けるほどになった。会員の井原まゆみさん(71)=阿波町四歩一=は「1人の趣味が集まれば町のイメージを変えられる力になることに感動した」と言う。

 会員宅は個性にあふれる。バラであふれる華やかな庭や、観賞と収穫を兼ねた「キッチンガーデン」のほか、田舎ならではの広い土地を生かしてベンチや小屋、小川を設けるなど、「見て楽しむ」空間作りに趣向を凝らしている。

 平均年齢70・4歳。集まって口を開けば「種を交換した」「こんな花を植えた」と話題が尽きない。代表の中井宣子さん(73)=同町四歩一=は「このグループを一言で表すとしたら花結び。花がいろんな出会いを運んで来てくれた」と笑った。

花で町を彩る阿波ガーデンクラブの会員=阿波町岩津の会員宅

地域に愛される居場所を

ショッピングプラザ「アワーズ」三橋稔事務局長

 県道鳴門池田線沿いにあるショッピングプラザ「アワーズ」(阿波町伊沢田)は地域密着を重視し、さまざまな取り組みを展開している。「阿波町には地元が好きな人がたくさんいる。私もその一人なのかもしれない」。中心となって仕掛けているのが、1999年の開業時から事務局長を務める三橋稔さん(54)=阿波町居屋敷=だ。

 同町で生まれ、育った。10代のころ、接客業のアルバイトを通して人と接する喜びを感じ、商売人を志すようになった。地元のスーパーで5年間修業を積むなどした後、アワーズの立ち上げに携わった。

 オープン当初から高齢者のための無料お買い物送迎バスを運行する。店にタクシーで買い物に来る高齢者の姿に疑問を感じたのがきっかけ。阿波、市場、山川各町を走らせ、移動手段のない住民には、なくてはならない存在となっている。

 18年からは月に1回、店の食堂を地元の有志に貸し出し、子ども食堂に活用。孤食を減らすための居場所を提供している。店舗北側には子どもたちが自由に遊べる「ツリーハウスの森」を住民らと手掛けた。

 「町を良くしようという人々の熱意を感じる。地域に愛される居場所を一緒に作っていきたい」と三橋さん。地域の人が集う仕掛けを日々考えている。

送迎バスを出迎える三橋事務局長(右)=阿波町伊沢田

「うまい」をいっぱい 唐揚げ・洋菓子販売「ありもん」

 「口と頭の中が『うまい』でいっぱいになるようなものを作る」。阿波町大道北の唐揚げ専門店「ありもん」は、店主吉田一也さん(43)と妻でパティシエの沙織さん(40)が、唐揚げとスイーツを提供している。

 唐揚げは、化学調味料を一切使わず、藻塩と自家製塩こうじなどに漬け込んだ。柔らかく何個でも口に運べるほど優しい味わい。食卓のおかずとして、子どもからお年寄りまで幅広く愛されている。

 店の一角には、沙織さんが自宅の工房で焼き上げた洋菓子や総菜約20種類が並ぶ。スコーンやプリンをはじめ、週末には限定のキッシュやタルトが彩る。

 上板町出身の吉田さんは、東京都内のフランス料理店などで働いた後、2011年3月の東日本大震災を機に帰郷。夫妻は県内のマルシェなどに出向き、「うるうるず」という名前で洋菓子を販売していた。夏場の対策として一也さんが唐揚げを売り出し、18年に店を構えた。

 「ありもんに来れば何かおいしいものがあるかも」。そう思ってもらえるような店を目指す。
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当面は持ち帰りのみ。

店主の吉田一也さん(左)と妻でパティシエの沙織さん

旬の食材ふんだんに 野菜ソムリエ経営レストラン・農家民宿

 のどかな田園地帯で人気を集めるのが、野菜ソムリエの資格を持つ篠原えり子さん(69)=阿波町西原=が営むレストラン「グランマキッチンえりこ」と農家民宿「あわ」。自家製や地元産の野菜をふんだんに使った料理が、県内外から多くの人を引き付ける。

 レストランでは、ナスやトマト、大豆など夫精二さん(73)と共に約6千平方メートルの畑で育てている野菜などを使用。あえ物「ならえ」やそば米汁などに仕立て、かつて法事や彼岸で振る舞われた家庭の味を再現している。野菜の風味が引き立つよう味付けは薄め。調味料まで手作りするこだわりを見せる。

 民宿では、ジャガイモ掘りや干し柿作りなど季節に応じた体験を通じて田舎暮らしを堪能してもらう。

 「阿波市には白ナスの美~ナスや柿島レタス、イチゴなど農家の思いがこもった野菜がたくさんある。旬に食べられる素晴らしさを伝え続けたい」。言葉の節々から食材への愛情がにじみ出る。

 レストラン、民宿ともに完全予約制。新型コロナウイルスの感染拡大で営業を見合わせているため、問い合わせが必要。<電0883(35)7362>。

畑で自家製野菜を収穫する篠原さん=阿波市阿波町西原