宝石ならショーケースに入れても輝く。神社ならそうはいかない。防災公園整備に伴って取り壊される小松島市の金長大明神(金長神社)のその後について、例えて言うなら、そんな計画がある

 生まれ変わる公園の一角に、展示物として何らかの痕跡をとどめおこうというのである。貴重な観光資源で、なくすには惜しい。しかし、政教分離の観点から神社を再建することはできない。市の苦渋の一案だ

 けれども、これはいただけない。神社は、それを大事に思う人たちの心のよりどころでもある。神社の痕跡をショーケースに並べても、心の結集軸とはなるまい。観光施設としても不十分だろう

 神社拝殿は老朽化しており、そのまま残すのも難しい。そもそも所有者のはっきりしない金長神社は、公園整備計画がなくても危機が進行していたのである

 用地を提供してもいいという人もいるそうで、移転改築も選択肢の一つである。市が手を出せない中、誰が担うかの問題はあるが、資金も含めて、ここは知恵を出し合うほかない

 過日、市内で講演した作家の山口敏太郎さんは、「観光地はつくるもの」と強調した。人口減少が続く小松島市。この際、金長さんを中核に、人を呼び込む戦略を練ってはどうだろう。全国に通じる狸(たぬき)合戦の物語。ゆかりの地を、みすみすなくすことはない。