常備消防のない勝浦町が昨年4月、民間の日本救急システム(宮崎県美郷町)に救急救命業務を委託して1年が過ぎた。同社によると、今年3月末までの出動件数は267件(前年比3件増)で例年並みだった。本年度は通報を受けた後、救急車が迅速に出発できる態勢整備などを進める。
同社の徳島支社勝浦救急事業部には、20~40代の男女7人の救急救命士が所属。救急車の運転を担当する町の救急隊員(臨時職員)6人と共に、24時間体制で対応している。
267件の出動件数の内訳は、急病129件、負傷46件、交通事故32件など。搬送者の年代は、70代以上の高齢者が7割を占めた。
搬送先は、徳島赤十字病院(小松島市)が51・3%、地元の勝浦病院が33・7%。町の統計はないものの16年度までは、高度医療に対応できる赤十字病院への搬送が多かった。救急救命士を配置したことで、軽微な場合は勝浦病院に搬送するなど、症状に応じた選択が可能になった。
初年度に洗い出した課題や、懸案事項の解消策も見えてきた。交通事故が多い中、不足していた救出用資機材は、町の予算に購入費が盛り込まれる見通しだ。これに先立ち2月には、救急救命士を対象に練習用機材を使って車のドアをこじ開ける訓練などを行った。
町はさらに、県道を挟んで離れている救急救命士と救急隊員の詰め所の一体化に向けた方策を示す方針だ。
徳島支社勝浦救急事業部の古川慎太郎部長は「住民に安心して利用してもらえるよう心掛けてきた。高齢者の利用が多いので、町や病院と連携し、事前に持病などの情報を把握する仕組みづくりも検討したい」と話している。