米軍の飛行訓練ルート「オレンジルート」が通る牟岐、海陽両町で今月に入り、米軍の低空飛行が相次いでいる。県によると、6日から2日連続で目撃され、12日も飛来。昨年12月の飛行日数(1日)を既に上回る。米軍再編に伴い岩国基地(山口県)が増強されていることや北朝鮮情勢の緊迫化が背景にあるとみられる。1週間で3回目撃される事態に町民の間からは「さらに飛来が増えるのでは」と懸念する声が出ている。
県総務課によると、米軍機の低空飛行とみられるケースが6、7両日に牟岐町で確認されたほか、12日午前11時15分ごろ、海陽町の那佐湾近くの山の稜線をかすめるようにスーパーホーネットとみられる1機が西へと飛んだ。牟岐町で低空飛行を監視する藤元雅文町議(66)=内妻=によると、9月26日にも飛行が目撃された。
米軍機の飛来は16年度以降、少なくなっていた。県のまとめでは、飛行確認日数は14年度に31日、15年度は37日だったが、16年度は7日。本年度も4月に2日、8月に1日の計3日だった。
飛行が相次いでいる背景には、厚木基地(神奈川県)から岩国基地に空母艦載機を移す計画がスタートしたことがあるようだ。計画では、岩国には来年5月までに従来の2倍となる約120機が配備され、嘉手納(沖縄県)と並ぶ極東最大規模の航空基地となる。
岩国で米軍を監視する市民団体リムピース共同代表の田村順(じゅん)玄(げん)さん(72)らによると、岩国には最新鋭のステルス戦闘機も配備された。さらに、北朝鮮情勢をにらみ、横須賀港を母港とする空母ロナルド・レーガンの艦載機16機が駐留しており、機体の数は大幅に増えている。田村さんは「岩国周辺のルートでは、訓練数が増えたり、これまでにない内容の訓練が行われたりするのでは」と懸念する。
県は13年に騒音測定機を牟岐、海陽両町役場に設置している。今月は修理中のために測定できなかったが、4月19日午前に海陽町で測定されたケースでは、それまでで最大の100・4デシベルを記録。ガード下で聞く列車通過音と同等だった。
県は飛行情報を確認する度に外務省と中国四国防衛局に対し、訓練中止を要請している。県は「県民の不安を取り除くため、低空飛行を把握し次第、今後も速やかに中止を求めたい」としている。