JR徳島線の下浦駅(石井町)から歩いて2分。県道西麻植下浦線沿線には、交流拠点の公民館分館をはじめ、住民が長年守ってきた釈迦堂、生活に欠かせないスーパーが並ぶ。同じ石井町でも、商業施設や公園などに人がにぎわう中心部とは趣が異なる。静かな雰囲気が漂う地域を巡ると、心温かい住民に出会えた。

世代間交流に力注ぐ、NPO法人四季の会

 シニア世代の社会参加や健康増進などを目的に、ボランティアや催しの企画に取り組む。NPO法人四季の会は町公民館浦庄分館を拠点に多彩な活動をする。世代間交流にも力を注ぎ、近くの学童保育クラブ・浦庄ともだちクラブの児童を招いて手芸や料理を教える。

 8月初旬の手芸教室では、布と綿を使い、高さ5センチのフクロウの置物を作った。副理事長の泊敏江さん(78)=浦庄=は「子どもたちはかわいく交流は元気の源。会員も子どもも呼び掛けに応えてくれてありがたい」と言う。

 四季の会の前身は、県内の理髪店主らが1996年に発足させたウオーキングを楽しむ「マンデーウオーキングの会」。さまざまな取り組みをするようになり、2002年に四季の会に衣替えした。08年にNPO法人化し、現在は石井町をはじめ、徳島市、藍住町、板野町などの30~80代の84人が所属する。

 手芸、料理同好会のほか、パソコン教室、ボランティアクラブなど多様なグループがある。道路管理部会は町から町道整備を受託し、清掃と植栽の剪定を行う。春、秋に開くウオーキングイベントは町内外から多くの人が集まり好評だ。

 ただ、本年度は新型コロナウイルスの影響で自粛せざるを得ない活動も多い。「早く収束し、みんなの笑顔が見られる日が来てほしい」と泊さん。コロナ禍での日々を耐えながら、本格的な再開を願っている。

子どもと一緒にフクロウの置物を作る泊さん(左端)ら=浦庄の町公民館浦庄分館

ランチメニュー豊富「キッチンカフェguri3」

 昼時にはサラリーマンらでにぎわう「キッチンカフェguri3(グリサン)」。高い天井が特徴的な店内に入ると、店長の岩佐直美さん(62)=浦庄=が笑顔で出迎えてくれる。

 午前11時~午後2時のランチタイムには、日替わり定食2種(650円)を用意している。野菜が多く、料理のタレやみそ汁のだしは手作り。牛バラ焼き肉やエビ玉丼などメニューは豊富で、1カ月間毎日通っても重ならないほどだ。

 唐揚げやトンカツなど定番の定食(800円)も人気。午前8時からはトーストと飲み物などがセットのモーニング、午後2時以降はお好み焼きを提供している。自家製ケーキも喜ばれている。

 徳島市出身の岩佐さんは1981年、結婚を機に浦庄に移り住んだ。夫が経営する建設業の事務をこなす傍ら、昔から興味があったお好み焼き店や喫茶店に携わってきた。2017年7月、夫が経営するコインランドリーの利用客に休憩してもらおうと、北隣に今の店をオープンした。

 客層は幅広く、1日に3回来店する人や、野菜を無料で提供してくれる人もいる。岩佐さんは「お客さんと親しくなれてうれしい。気軽に来店し、のんびり過ごしてほしいですね」と笑った。

 営業は午前8時~午後6時。月曜定休。

定食やお好み焼きを提供する「キッチンカフェguri3」の岩佐店長(右)=浦庄

信仰を地域で守り続け、釈迦如来座像

 木造平屋の釈迦堂でまつられている釈迦如来座像は、古くから地域住民が信仰の対象として大切にしてきた。高さは2・4メートル、台座を含めると3・5メートルになる。天井と座像の間が狭いため、高さ以上に迫力を感じる。冷厳な表情が印象的だ。

 町などによると、座像は寄せ木造りで、制作年代は作風から鎌倉時代初期とみられる。頭部は当時のまま残り、胴、膝は室町時代、両手は江戸時代に補修されている。作者などは分かっていない。近くの願成寺が所有者となっている。

 1996年に町有形文化財に指定されたのを受け、住民が下浦釈迦如来座像保存会を発足させた。約50人が会員となり、月1回、敷地内の除草や堂内の掃除などを行うほか、敷地に植わる桜をライトアップする桜祭り、釈迦の誕生を祝う花祭りなどを催す。浦庄小学校や浦庄幼稚園の子どもが課外授業で見学する際には案内役も務める。

 近年は地元でも忘れられつつあり、修繕費の確保などが課題となっている。会長の高瀬勝夫さん(64)=浦庄、パート従業員=は「地域が守り続けてきた。私たちも力を合わせて未来につなげていきたい」と力を込めた。

 いつでも参拝できるが、堂内の見学希望者は保存会に連絡が必要。問い合わせは高瀬さん<電090(9455)5434>。

高さ2・4メートルの釈迦如来座像と、世話を続ける保存会の高瀬会長=浦庄

特上にぎりずし評判、スーパー「セルフの店かわむら」

 郊外の大型スーパーが人気を集める中、昔ながらのスーパーが浦庄小学校の北隣にある。「セルフの店かわむら」。約158平方メートルの店内に、新鮮な魚や野菜、総菜、日用品など地元住民に欠かせない商品が所狭しと並ぶ。戦前に創業し、現在は3代目の河村晶義さん(51)、二三子さん(46)夫妻=浦庄=が切り盛りする。

 河村さんは毎朝4時半に徳島市の市場でタイやアジ、ナス、キュウリといった食材を仕入れ、生鮮品売り場で魚をさばく。二三子さんは総菜売り場で調理や品だしを担う。

 評判なのが8貫入りの特上にぎりずし。町内のほか、吉野川市や板野町、神山町などの常連客もいる。

 詳しい創業年代は不明。河村さんの祖母が昭和初期に店を開いたという。当時は文具やげた、下着などを販売し、2代目の父裕史さん(81)が継いでからは化粧品や衣料品、ランドセルなどもそろえた。

 「もうけるな。お客さんに喜んでもらうのが一番だ」。裕史さんは口癖のように言っていた。よく聞かされた河村さんは「お客さんのため、店が生き残るため、これからもできるだけ安く提供したい。ひっそりとしていて、息が長い、そんな店であり続けたい」。これからも地域住民と共に歩み続ける。

 営業は午前10時~午後7時。水曜定休。

「セルフの店かわむら」を切り盛りする河村さん夫妻=浦庄