徳島県立博物館の常設展が全面リニューアルされるのに先立ち、新たに展示される資料の一部を紹介する企画展「徳島まるづかみ展」の県西編が美馬市立図書館フリースペースで来年1月18日まで開かれている。展示されているのは、草食恐竜プロバクトロサウルスの高さ2・3メートルの骨格模型や、地元の脇町高校から寄贈を受けた羽を広げた幅が1・4メートルあるオジロワシの標本など約40点。貴重な資料は博物館から約35キロ離れた会場までどのように運ばれ、どのように設営されたのか。その舞台裏に密着した。

14日午後1時

 博物館のトラックヤードのシャッターが開き、日本通運のトラック3台が入ってきた。作業員6人は段ボールや梱包材などの資材を下ろすと、早速梱包に取り掛かった。今回は資料数が多く大きな物もあるため運搬の専門家である日通が作業を担当し、学芸員は資料の壊れやすい箇所などを作業員に伝えて梱包方法を指示したり、運び忘れがないかを確認したりした。

学芸員が立ち会い、梱包作業をする作業員

 梱包には、表面がつるつるとしていて柔らかい「薄葉紙(うすようし)」や、一般的に「プチプチ」と呼ばれるビニール製の「エアキャップ」、綿を薄葉紙で包んだ「綿ぶとん」といったさまざまな緩衝材が使われる。資料を縛る際には、傷がつかないように手ぬぐいなどに使われる「さらし」を用いる。

オジロワシの梱包作業

 オジロワシが羽を広げている標本の梱包は、段ボールで箱を作るところから始まった。標本の大きさを測り、段ボールを切って箱を作る。そこに標本を移動させ、さらしで箱の底面にくくりつけた。移動中に揺れて破損する恐れのある羽と首は、段ボールや緩衝材を使って固定された。

 梱包が済んだ資料は美術品専用車に積み込まれる。徳島県内に1台しかないという貴重な車両だ。この車には振動を吸収するエアーサスペンションが搭載されており、荷室内部の壁全面には衝撃を抑えるために厚さ6センチほどのウレタンマットが付けられている。温湿度の管理ができる空調システムも備えている。座席は運転手や作業員に加えて学芸員が同行する場合に備え、2列シートで計5人が乗車できるようになっている。

美術品専用車の内部。奥に空調システムがあり、側面には青いマットが取り付けられている

14日午後3時45分

 資料約40点とパネルや展示台などの備品全ての積み込みが終了。翌日の朝、会場に運ばれる。

15日午前9時40分

 会場となる美馬市立図書館にトラックが到着し、作業員が次々と荷物を下ろしていく。会場となる2階に資料を運ぶための大きなエレベーターがないことから、オジロワシの標本やプロバクトロサウルスの骨格模型も一般的な大きさのエレベーターに乗せて運ぶことになった。

 オジロワシもプロバクトロサウルスも「本当にエレベーターに乗るのか?」と心配になる大きさだったが、作業員たちはエレベーターの大きさを測り、声を掛け合いながら慎重に積み込んだ。少しでも気を抜けばドアや壁にぶつかって資料を傷つけてしまうぎりぎりの作業だっただけに、無事に成功させたプロフェッショナルたちの高い技術に感心した。

プロバクトロサウルスの骨格模型の組み立て作業

 展示スペースでは、学芸員が事前に決めたレイアウトに沿って展示台やパネルを配置。同時進行で学芸員と作業員が資料を確認しながら荷ほどきをしていく。プロバクトロサウルスの骨格模型には尾の骨や頭骨、肋骨などが取り付けられて全身骨格が完成した。

15日午後0時30分

 大型の資料の設置が終了し、日通の作業員が撤収した。

15日午後1時30分

 休憩を挟んで学芸員のみでパネルの位置などを最終調整する。並べられた資料にはそれぞれ説明を書いたラベルが添えられた。

15日午後3時

 図書館側に映像を使った展示物の操作方法や資料の概要を伝え、この日の作業は終了した。後日、別の分野を担当する学芸員が残りの資料を陳列し、会期を迎える。