◇明治安田J2第14節  徳島 1-0 京都 5月12日鳴門ポカリスエットスタジアム

プロ初ゴールの小西雄大=5月12日、鳴門ポカリスエットスタジアム

 プロ2年目、徳島県阿波市出身の小西雄大の左足が徳島ヴォルティスに勝ち点3をもたらした。前半27分、右サイドのクロスから相手ディフェンスがクリアしたボールが目の前に飛んできた。体が反応し「跳んだほうがふかさないかなと、あれがベストな選択だったかな」と振り返る一撃は、ジャンピングボレーでのシュート。捉えたボールは、ゴールに吸い込まれ、リーグ戦22試合目で待望のプロ初ゴール。この1点を全員で守り切り、そのまま決勝点となった。ゴール、勝利を喜びながらも「うれしかったのはうれしかったですけど、正直安心した」と、ようやく結果を残せたことにほっとした表情を浮かべた。

 昨季オフ、スペインのクラブの練習に参加。「前へ向かう意識の高さを感じた」といい、今季は攻撃への意識も高く取り組んできた。前回のホーム・愛媛戦では強烈なミドルシュートでゴールを脅かし、得点の匂いを感じさせていた。今回の対戦相手となった京都のGK若原智哉は1学年下で、小西はガンバ大阪ジュニアユース時代から「中学、高校と対戦経験があり、ゴールを多く決めていた」と話す。相手のメンバーを見て、良いイメージを持って試合に臨み、初ゴールとなった。

 チームは、負傷者が続出し、大黒柱のキャプテン・岩尾憲までをも欠く苦境。MFシシーニョとともに、その穴を埋めるため、攻守に走り回り、セットプレーではキッカーも務めた。水戸戦では負傷した岩尾との交代で入ったが、守備のポジショニングなど多くの課題が残った。今回は「チーム全体のバランスを見ることを意識した」と言い、ダブルボランチを組んだシシーニョとのコンビもうまく機能し、勝利した。チームにとって、キャプテンの岩尾不在でも勝利した意義は大きく、チーム力アップへの期待も膨らむ。

 ガンバ大阪ユース出身で、同期には、オランダ1部のフローニンゲンへ期限付き移籍して活躍し、完全移籍が決まった堂安律、ガンバで今季J1デビューを果たし、ルヴァン杯でゴールを決めた食野亮太郎らがいる。彼らの活躍に焦りもあったが、一つ結果を残したことで一回り大きくなってくれそうだ。次の試合に向け「まだまだミスも多い。前に絡んでのシュートも少なく、ポジショニングも良くない部分がある。ちょっとずつ改善しているが、さらに良くしていきたい」と意気込む。

 徳島のリカルド・ロドリゲス監督は、小西について「この2年間で大きく成長した。(ゴールは)本当にうれしい」と喜ぶ。プレーのインテンシティー(強度)やミドルシュート、中盤のさまざまなポジションをこなせる能力などを評価。ルーキーイヤーだった昨季、終盤の大分戦では交代カードの1枚目になるなど、力を伸ばし、指揮官の信頼も厚い。今季に関しても「しっかり練習し、いろんなことを習得していきながら、責任感も日々増しているのではないか」と話す。将来について「このままいいプレーを続け、また改善もしていかなければいけないが、たくさん試合に出れば、オリンピックに出て日本を代表する選手になれるんじゃないかと思う」と大きな期待を寄せている。

 ヴォルティスでプレーした徳島県出身者のうち、リーグ戦でゴールを決めたのは10年ぶり2人目だ。「やっと結果が出せてよかった。こういうのを見て、徳島の子どもたちがサッカーを好きになったり、プロを目指す選手が増えたりしてくれれば」。スタジアムで子どもたちに夢を与える存在でありたいと願う20歳。ピッチで躍動する姿から目が離せない。