那賀町の中心部から那賀川に沿って上流へ向かうと、エメラルドグリーンの川口ダム湖が広がる。周辺では春に桜、夏にアジサイ、秋には紅葉を満喫できる。相生地区には、温泉や美術館、キャンプ場など多数の観光施設があり、囲まれた自然を生かした多彩な食と、昔から伝わる味も楽しめる。健康づくりの活動も盛んで、高齢者の生き生きした笑顔があふれる。

懐かしい味の名物品 ビーンズあい「はんごろし」

 「はんごろし」。おはぎのような見た目からは想像できないほどインパクトがある名前だ。よもぎの香りと、ほどよい塩味のあんが口の中に広がり、どこか懐かしい味を楽しめる。もち米を半分ほどしかつぶさないのが由来で、相生地区では昔からお盆や祭りの際に家庭で作られている。

 那賀町の相生農産加工グループ・ビーンズあいが商品化に取り組み、2003年から販売を始めた。売り出した当初は「聞こえが悪い」と不評だった。一時は名称を「草もち」に変更したが、売り上げが伸び悩んだ。

 町と徳島大が連携して地域活性化に取り組む地域再生塾に相談すると、ユニークな商品名の方が親しまれやすいとアドバイスを受け、名前を戻した。PR活動に力を入れ、認知度が上昇し、現在では町の名物商品になった。農産物直売所あいおいでは、約200個が午前中に売り切れる。

 同町雄にある製造所に、60~80代の女性メンバー9人がシフト制で勤務する。午前6時半に作業を始め、分担してもち米やうるち米を炊いたりこしあんを包んだりする。大量注文が入れば午前4時から作業をすることもあるという。

 葛木ひでさん(72)=雄=は「はんごろし作りはいきがい。売れた分だけお小遣いにもなるので楽しい」と話す。

 3個入り300円、5個入り500円。問い合わせはビーンズあい<電0884(62)0178>=午前6時半~10時。

はんごろしを製造するビーンズあいのメンバー=那賀町雄

需要高まり出荷数増、ジビエの処理加工施設

 近年、注目が高まっている野生鳥獣肉(ジビエ)の処理加工施設が那賀町朴野にある。県内外の料理店から需要が高まっており、出荷頭数が年々増加している。

 運営するのは、元町議の中川修さん(80)。自ら栽培している農作物が野生鳥獣に荒らされる現状を受け、10年前に狩猟免許を取得した。駆除のために捕獲したシカやイノシシを廃棄せず有効活用できないかと考えていたところ、ジビエの需要があるのを知った。自ら設計や建築を行い、2017年に施設を建てた。

 自身が捕獲したり他の猟師が持ち込んだりした個体を生きたまま、施設近くの牧場へ運んで育てる。現在は合わせて約50頭を飼育しており、注文に応じて解体する。17年に59頭だった出荷頭数は、昨年230頭に上り、都内のジビエ料理店や県内の居酒屋などに卸した。シカのモモ肉は町のふるさと納税の返礼品に採用されており、人気を集めている。

 「自分の健康維持と、野生鳥獣被害の減少のために、頑張りたい」と意欲は衰えない。18年には、日本アジアハラール協会(千葉県)からイスラム教の戒律に沿った「ハラル認証」を取得した。専用の設備や刃物で解体したシカ肉を国内のイスラム教徒に提供しており、今後はイスラム圏の国々への販路拡大も視野に入れる。

シカやイノシシの処理加工施設を運営する中川さん=那賀町朴野

筋トレで健康づくり、96歳のフレイルサポーター

 加齢に伴って心身の活力が低下した「フレイル(虚弱)」の予防に向けて、那賀町が町民への普及を進めるために任命している「フレイルサポーター」。最高齢が岡ミヤノさん(96)=雄=で、相生老人福祉センターなどで活動している。

 サポーターは、所定の研修を受けた町民が生活習慣を指導したり簡単な運動を教えたりして健康づくりを支える。昨年、1期生として29人が誕生した。

 岡さんは旧鷲敷町出身。夫を亡くした2007年からは1人暮らしで、趣味のグラウンドゴルフや日課の筋トレに打ち込み、関心の高い医療や健康への講演会に足しげく通っている。

 昨年町内で開かれたフレイルの勉強会で、一番前の席で熱心に耳を傾ける姿が町社会福祉協議会職員の目に留まり、サポーターの研修への誘いを受けた。

 新型コロナウイルス感染拡大のため、3月からは活動を控えている。町社協が自宅でできる取り組みをケーブルテレビで紹介しており、岡さんも出演。「私より若い年齢の人たちが寝込まず元気で暮らせるよう、少しでも力になれば」と言う。

 町社協職員からも「フレイル予防に欠かせない栄養、運動、社会参加の三つ全てを実践されている岡さんは、みんなのお手本。欠かせない存在です」と頼られている。

フレイルサポーターとして活動する岡さん=那賀町雄

大ぶりで甘味が強い養殖アメゴ、旅館「淡水荘」

 もみじ川温泉から那賀川支流の紅葉川沿いを車で30分ほど走ると、山深い自然の中に1軒の旅館が立つ。「淡水荘」では、「川魚の女王」と称されるアメゴを養殖し、料理の提供や販売をしている。ふ化から出荷までの期間を長くかけているため、大ぶりで甘味が強く、県内外から年間600人以上が訪れている。

 切り盛りするのは、西上健一さん(65)=竹ケ谷=と妻の育代さん(68)。1970年に健一さんの父・喜一さん(故人)が仲間に呼び掛け、傾斜地を整備して養殖を始めた。2年後に木造2階建てのレストランを開業し、塩焼きや姿ずしなどを出している。77年に旅館業を始めた頃、京都の総合電機メーカーで働いていた健一さんが結婚を機に帰郷した。

 養魚池16面で計10万匹を育てている。台風の影響でほとんどが死んでしまい、廃業を覚悟した時もあったものの、西上さんは「常連客の応援を励みにここまでやってこられた」。

 6月からは新型コロナウイルスの経済対策として県が始めた宿泊料助成キャンペーン「とくしま応援割」で県内客が増加。「淡水荘のアメゴが一番おいしかったと言ってもらえるよう頑張りたい」と力を込める。

 レストランの営業時間は午前11時から日没まで。定休日は水曜日。前日までに予約が必要。問い合わせは淡水荘<電0884(62)1378>。

淡水荘を切り盛りする西上さん=那賀町竹ケ谷