徳島ヴォルティスをJ1昇格に導いたリカルド・ロドリゲス監督

徳島ヴォルティスをJ1昇格に導いたリカルド・ロドリゲス監督

 「パルティード・ア・パルティード」。勝っても負けても「一試合一試合」という意味のスペイン語を呪文のように繰り返した。「目の前の試合をしっかり戦う。個人とチームのパフォーマンスをいかに高い次元に持っていけるかを大切にしたい」。信念を貫き、悲願成就の時を迎えた。

 徳島初の外国人監督となって4年目。「日本語はあまりうまくない」とはにかむ表情はピッチサイドで一変する。「キリカエー、キリカエー」。ボールを失うと「素早く守備へ切り替えよ」と鬼の形相で指示し、手を打って奮起を促す。選手と共に戦う姿は闘将の名にふさわしく、サポーターらからは「リカ将」の愛称で親しまれている。

 岩尾憲主将に監督から何を学んだのか問うと「やはり戦術じゃないですか」。J1クラブに羽ばたいていった選手も戦術の確かさを絶賛する。目標とする指導者にFCバルセロナで指揮を執った同じスペイン人のグアルディオラ監督を挙げるように、攻撃的で柔軟性に富んだ現代の欧州スタイルを徳島に根付かせた。

 勝つために妥協はなく、やりたいことを主張する。言葉で、映像で、緻密なポジショニングを選手に細かく落とし込んでいく。その一方で、自身の方針を押し付けることはせず「確かにその可能性はある」とコーチらの言葉に耳を傾け、より良いものに練り上げていく。気さくに声を掛け、チームの和を大切にする日本人らしさも備える。

 「負けた後、自分の気持ちを早く整理できるようになった。引きずらず、選手たちにより落ち着いて取り組んでもらうために」。サッカーへの情熱がほとばしる46歳。混戦のJ2を戦う中で、自身も確かな成長を遂げた。