第1部 四国4県連携事業セミナー「脱炭素経営と自然エネルギーの可能性」

講演1「脱炭素社会に向けた潮流と企業・地域の価値向上について」 環境省 地球環境局地球温暖化対策課 課長補佐 岸 雅明 氏

 

私たちは現在、2つの危機に直面している。新型コロナウイルスによる危機と、豪雨被害や台風の巨大化など異常気象といったコロナ以前から存在していた気候危機。これらの危機によって私たちの生活そのもののリスク、世界の経済やビジネスのリスク、地域存続のリスクが今まで以上に高まっている。
 10月下旬にあった菅首相の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことが表明された。
 環境省としてはウィズコロナ、ポストコロナ社会をカーボンニュートラルに向けて移行させ、新たな地域の創造、国民のライフスタイルの転換を通じてカーボンニュートラルへの需要を創出する経済社会への変革が求められていると考えている。
 変革を持続的に進めるためには、経済と環境が同じ方向で進んでいく関係性を作り出すことが重要だ。これまで経済と環境はどちらかをやればどちらかが悪くなるという対立関係にあったが、今後は企業や地域の脱炭素への取組みが、地域の経済や社会課題の解決につながるようなアプローチをすることが大切になっている。
 そこで2050年カーボンニュートラルへの挑戦を新たな成長戦略に位置づけることで、いろんなビジネスチャンスが生まれていくと考えている。
 近年はグローバル企業を中心に、脱炭素化に向けた取組みを経営課題として捉え、経営の方針や戦略の中に取り入れる企業が増えている。気候変動に対応した経営戦略の情報開示や脱炭素に向けた目標設定などの枠組みも国際的に拡大しており、金融機関や投資家への経営の見える化を通じて企業価値の向上につながるからだ。
 そうしたグローバル企業がサプライチェーン全体の排出量を目標設定すると、そのサプライヤーとなる中小企業も脱炭素にいち早く対応することがサプライチェーンの中で評価されて競争力の向上にもなるだろう。
 地域的な切り口で言うと、最後にいろんな技術が実装されるのは地域になってくる。脱炭素系の技術を実装するにあたっては地域の課題とニーズ、資源を掛け合わせ、それを地域内外の連携によって実現していくという視点が必要だ。
 つまり脱炭素を実現するだけでなく、災害に強いまちづくり、そこからいろんなビジネスが繰り広げられたり、生活の中で健康に役立ったりする。地域課題の解決とセットで考えることが地域の価値向上にもなる。
 千葉県睦沢町の事例では、道の駅に再生可能エネルギーや地域の天然ガスも含めた自立分散型エネルギーシステムを導入した。それにより実際に台風で一帯が停電した際、ある種の避難所となってシャワーやトイレを提供できたり、隣接する住宅が停電を免れたりした。
 脱炭素化は地球温暖化の防止が目的ではあるが、それ自体は再エネ、省エネ、蓄エネのビジネスでもある。それを実践することが企業や地域の人たちにとっての競争力や災害対応力の強化、そして地域活性化につながるメリットになる。
 2050年カーボンニュートラルに向けて企業や地域がそれぞれの価値や競争力の向上を目指して、どうやって技術を実装してビジネスを展開していくか。それを考えつつ実践していくことが経済と環境にとっての好循環を作り出す。政府としてもそういった取組みをしっかり後押しできるようにしていきたいと考えている。