夫婦が希望する場合、それぞれが結婚前の姓を名乗る「選択的夫婦別姓」。かつて推進の立場で議員活動をした菅義偉氏が首相に就き、議論の進展が期待されたが、15日の自民党の会合では反対派の意向を強く反映した「第5次男女共同参画基本計画案」の改定案が了承され、後退を印象付けた。徳島新聞は知事と県内24市町村長に制度導入の賛否を尋ねるアンケートを実施した。「賛成」と回答したのは13人で、多くは個人や多様性の尊重を理由に挙げた。「反対」と明記したのは1人だった。

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 アンケートは「家族の在り方について」と題して10月末から11月初旬に文書で実施し、全員から回答を得た。制度の導入について、<1>賛成<2>反対<3>その他―から最も近い選択肢を選んでもらい、その理由の記述も求めた。

 「賛成」としたのは徳島、阿南、吉野川、阿波、美馬、三好、石井、神山、佐那河内、勝浦、海陽、藍住、板野の13市町村長。

 「個人の尊重は、多様性を保障できる社会基盤が前提。選択できる制度に意義がある」(黒川征一・三好市長)、「国際化やSDGsの推進を考えれば、個人の選択肢に幅を持たせることは当然」(表原立磨阿南市長)など、「多様性」や「個人の尊重」を理由に挙げるケースが目立った。

 原井敬吉野川市長は制度の導入が「女性の地位向上に寄与する」とジェンダー平等を目指す視点で述べたほか、県内唯一の女性首長である内藤佐和子徳島市長は「女性が姓を変えるのが当然という風潮の中、個人的に嫌な思いをしたことがある」とした。

 藤井正助阿波市長は、改姓を要する現制度によって「キャリアに分断が生じる、結婚をあきらめるといった不利益を被るケースが少なからずある」という現実を指摘した。

 「反対」と回答したのは坂口博文那賀町長だけで、「子どもたちへの影響が心配」と理由を挙げた。ほかにも3人が子どもの姓について懸念を示した。

 飯泉嘉門知事を含む11人は賛否を明言しなかった。うち、飯泉知事ら4人は、国での議論や判断を求め、自身の意見の表明を避けた。花本靖上勝町長は「旧姓使用ができる現状で問題ない」との立場。中山俊雄小松島市長は、行政事務のスムーズな運用を容認の前提条件とした。

 立命館大の二宮周平教授(家族法)は「判例では、氏名とは人が個人として尊重される基礎、人格の象徴だとされている。つまり、氏名とはアイデンティティーそのもの」とし、結婚による改姓の強要は「人格権の侵害に当たる」と指摘する。子どもへの影響を懸念する声に対しては「少数者の選択に寛容でない社会の表れ。現在でも、事実婚、離婚した家庭の子どもたちは、姓が違う親を持ち、育っている。現実を見るべきだ」と言う。

 内閣府が2017年に男女5千人を対象に実施した調査(回収率59%)では、選択的夫婦別姓制度の導入への賛成派が42・5%に上り、反対派の29・3%を大きく上回った。全国の地方議会では制度導入を求める意見書が相次いで可決されている。二宮教授は「首長も地域の実情を知るべきだ。国任せにするのでなく、住民の声に耳を傾け、すくい上げるのが本来の仕事ではないか」と呼び掛けた。

 1996年、法相の諮問機関である法制審議会は、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正要綱を答申したが、自民党保守派の反対によって改正法案の国会提出には至らなかった。現在、夫婦同姓制度を採用しているのは日本だけ。9割以上の夫婦で改姓するのは女性の方で、国連の女子差別撤廃委員会は「差別的な規定」として再三にわたって改善を勧告している。