コロナで仕事がなくなったひとり親の春日さん(手前右)。原田理事長(右奥)から食べ物やケーキを受け取った=徳島市内

 「なんでお母さんはご飯食べんの」。3人の子どもを1人で育てる徳島市の春日優衣さん=仮名、30代=は小学生の息子にこう聞かれ、笑ってごまかした。「ダイエット中なんよ」

 新型コロナウイルスの感染拡大で、一家4人の暮らしは行き詰まった。手取りで月8万~16万円あった人材派遣の収入は、緊急事態宣言が発令された4月以降に途絶えた。臨時休校で給食がなくなり、子どもたちの食費もかさんだ。

 ツイッターで「#食料支援」と検索し、たどりついた市内のフードバンクでコメをもらった。おもちゃや服をフリマアプリで売って家計の足しにした。それでもやり繰りできない時は、自分の食事を抜いて子どもたちのおなかを満たした。

 人気漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」のグッズをねだられても買ってあげられない。もし離婚していなかったら、安定した職に就いていたら...。そう思うと自分が情けなくなる。「ごめんね」

 10社近く受けた採用面接では「子どもが熱を出しても出勤できるか」と尋ねられ、答えに詰まった。医療従事者の母は多忙の上、感染を防ぐために会えない状態が続いており、これまでのように子どもの世話を頼めない。「育児と両立できる仕事が見つからない」

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 コロナ禍は、ひとり親家庭の苦境を浮き彫りにした。県によると、県内の母子家庭は7835世帯、父子家庭は905世帯。児童扶養手当などを含む平均年収は母子家庭が260万円で、父子家庭が294万円にとどまる。

 育児のためフルタイムでは勤めにくく、県内で働くシングルマザーの3割がパートやアルバイトなどの非正規雇用で、景気悪化のしわ寄せを受けやすい。

 困窮の背景には養育費の不払い問題もある。県内のひとり親家庭の半数以上で離婚時の取り決めがない。夫の暴力から逃れようと離婚した春日さんも「もう関わりたくない」と受け取っていない。

 国は感染拡大を受け、ひとり親向けの給付金を支給した。春日さんは夏に11万円を受給し、年内に2回目が支払われる。だが、生活費や子どもの学習費に充てると、ぜいたくできるようなお金は残らない。

 それなのに、ネット上には心ない書き込みがあふれる。「ひとり親ばかり給付金をもらってずるい」。こうした声に引け目を感じ、母子家庭だと知られないよう保護者の友達はつくらないという。世間の冷たい目が孤立を招いている。

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 12月中旬、子ども食堂を運営する徳島市のNPO法人クレエールの原田昭仁理事長らがサンタクロースに扮して春日さん宅を訪れ、食料品とともにクリスマスケーキや菓子を渡した。生活に余裕のない子育て世帯を支援する「こども宅食」の取り組みで、春日さんは「今年はケーキなんて諦めていた。本当にありがたい」と頭を下げた。

 原田理事長は「コロナで困っている家庭は多く、子どもたちがおなかをすかせないよう支えていきたい。周りの目を気にせずにわれわれを頼り、子ども食堂に来てほしい」と話している。

 2020年、世界は新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)された。感染症の拡大は徳島県内でも医療や経済、教育などあらゆる分野に暗い影を落とし、いまだ先行きが見通せない。コロナ禍が露呈させた社会のひずみを検証する。