日本で最も親しまれているクラシック音楽といえるベートーベンの第九交響曲。人類愛と平和への願いが込められた「歓喜の歌」は人々を魅了してやまず、全国津々浦々で歌い継がれている。アジア初演の地・鳴門をはじめ、各地の特色ある第九演奏会を紹介する。

 

国技館5000人の第九コンサート

 幅広い年齢の歌い手が全国各地から集い、声高らかに第九を歌い上げる墨田区の早春イベント。先着順で誰でも申し込め、国外からの参加もある。1985年2月、国技館が台東区蔵前から近代相撲の発祥の地である両国に戻ってきたことを祝って初めて開かれ、回を重ねてきた。

終演後に行う解団式も好評で、参加した合唱団を都道府県別に紹介し、交流を深める。33回目となる次回は来年2月19日、「世界へ届け 平和の願い」をテーマに開かれる。

 

(提供:MBS/サントリー1万人の第九事務局)

サントリー1万人の第九

 一般公募で毎年結成される1万人の特別合唱団による大規模なコンサート。オーストリアの管弦楽団で音楽監督を務める佐渡裕さんが指揮することでも知られる。1983年に大阪城ホールの完成記念として始まり、98年までは故山本直純さんがタクトを振った。

 全国各地から集まった参加者は、約3カ月間のレッスンを経て12月の本番を迎える。これまでの参加者の年齢は6〜96歳と幅広い。今年は12月4日に開かれる。毎日放送主催。

 

清水町第九交響曲演奏会

 北海道中央部の清水町で1980年から5年に1度のペースで開かれている。地方自治体が第九で町おこしを図った先駆けとなる演奏会で、人口1万人余りの酪農の町の挑戦は全国的な注目を集めた。町民ら200〜300人の合唱団と、主に札幌交響楽団によって過去7回開催。次回は2019年までに開く予定。

 町教委は「第九のまち」を浸透させようと、今年から成人式でも第九を歌う試みを始めた。

 

会津第九演奏会

 福島県内の第九愛好者でつくる会津第九の会が3年に1度開く定期公演。会が創立された翌年の1980年に第1回演奏会が開かれた。合唱団に会津若松市内の高校生が入っているのが特長。2014年の前回は200人の高校生を含む360人が歌声を響かせた。

 ソリストには地元出身者を招き、演奏は会津市民オーケストラが担う。鳴門市の板東俘虜収容所を人道的に運営した会津若松市出身の松江豊寿所長と第九の関係も紹介される。次回公演は来年12月17日。

 

 

鳴門の第九

 第1次大戦中の1918年6月1日、鳴門市にあった板東俘虜収容所のドイツ兵捕虜によってアジアで初めて演奏された第九。その歴史にちなみ、82年の同市文化会館の落成記念として始まった。

 市は6月の第1日曜日を「第九の日」と定め、毎年この日に演奏会を開催。認定NPO法人鳴門「第九」を歌う会が運営主体となり、県外約400人を含む約600人が「歓喜の歌」を響かせている。

 今夏、同法人がサントリー地域文化賞を受賞。2年後の初演100年に向け、機運が高まっている。

 

 

第九演奏会〜 世界に広がれ! とくしま”歓喜の歌“プロジェクト

 2018年の第九アジア初演100年に向け、徳島の第九の魅力を国内外に発信しようと、ホップ、ステップ、ジャンプの形でスタートさせた3カ年計画の演奏会。県内外から募った2000人規模の合唱団に加え、日本を代表する指揮者・秋山和慶さんのタクトでとくしま記念オーケストラが出演し、16年1月30日に第1回演奏会を徳島市のアスティとくしまで開いた。今後も同様のスタイルで、17年2月12日、18年2月ごろと続く予定。