「大きな舞台をより多く」と前進を目指す藤井聡太二冠=東京・千駄ケ谷の将棋会館

藤井聡太二冠が書いた色紙

 一人の天才少年棋士の快進撃が人々の将棋への関心を呼び覚まし、人工知能(AI)に凌駕されて対応を迫られていた将棋界を救った。将棋ソフトの指し手や思考を研究し、時にAIをもしのぐ妙手をひねり出す藤井聡太二冠(18)は、新時代の申し子だ。世界を揺るがすコロナ禍の中で明けた2021年、春には高校を卒業し、さらなる飛躍を目指す。非凡な着想から繰り出し、人々を元気づける次の一手は―。

 「ソフトが自動で定跡を作成してポンと出してきたとしても、それを人間が覚えて使えるかというと、多分、そういうわけではない。結局、序盤の定跡のような部分でも、人の解釈というか、そういうのが出てしまうのかなと思う」。昨年、棋聖と王位を続けて奪った藤井二冠は棋士とAIの関係をそう語る。

 東京・千駄ケ谷の将棋会館の対局室。将棋盤の前に正座した藤井二冠はスーツにマスク姿で、コロナ禍の中の対局を「手洗いやマスクなど基本的な対策をしっかりする。公式戦を指せるのは非常に恵まれていると思う」と言う。

 時折、若者らしい笑顔を浮かべながら、慎重に言葉を選んで話す藤井二冠は、凛とした雰囲気に包まれている。

 初防衛を目指す今年の王位戦7番勝負(徳島新聞社など主催)については「挑戦者の気持ちで、変わらず全力でぶつかる気持ちで臨めたら」と気負いは感じさせない。

 昨年は、挑戦者で木村一基王位(当時)に4連勝したため、第5局の徳島対局は幻になった。徳島のファンには徳島対局が待ち遠しいところだ。

 藤井二冠は「徳島は小学2年生か3年生のころに、家族旅行で訪れた。その時は、祖谷温泉とか、大歩危小歩危の辺りに行った。すごく自然豊かなところで楽しかった思い出がある」と振り返る。

 麺類が好物で、対局時の昼食にもよく注文する。徳島ラーメンのイメージを尋ねると「徳島ラーメン、結構、濃いめですか?」。豚バラ肉などの特徴を聞いて「ラーメンは好き。前回の王位戦では徳島を訪れることはできなかったですけど、機会があれば、楽しみにしたいなと思います」と笑顔を見せた。

 藤井二冠が色紙に書いたのは「初心」。「将棋を始めた時などの新鮮な気持ちを忘れずに取り組んでいきたい」との思いを込めた。ファンらの期待を背に「21年は今より実力をつけて、タイトル戦といった大きな舞台をより多く経験できる1年にしたい」と前進を誓った。