板東俘虜収容所に関する日報「雑書編冊」の一部。当時の様子が書かれた史料をデジタル画像で見ることができる(県立文書館提供)

 徳島市の県立文書館は、第1次世界大戦時に鳴門市大麻町にあった板東俘虜収容所に関する史料「寺岡家文書」をデジタル画像で記録し、館内閲覧室で公開を始めた。ドイツ兵の暮らしぶりや引き起こした事件、周辺住民との関わりなど、収容所の詳細な記録が手軽に確認できるようになった。

 寺岡家文書は、収容所を管轄する板西警察署の署長を務めた寺岡彦太郎の子孫が所蔵していた文書。「板東俘虜収容所沿革史」(1918年頃作成)と「雑書編冊」(17、18年)の計3点で、1000ページを超える。

 沿革史は寺岡署長が収容所の概要をまとめたもの。「雑書編冊」は、収容所前にあった警備警察官出張所で勤務した警察官が寺岡署長に宛てて出した日報のつづりだ。
日報はドイツ兵への面会や宣教師による慰問、商人の出入りなどの記録が中心。捕虜同士のけんかや脱走などの事件も詳細に記述している。子どもの通学のため捕虜に橋を架けさせることを求める陳情や、ソーセージやハムの作り方を教えてもらおうとする記述もある。

 昨年2月、寺岡署長の孫、寺岡健二郎さん(77)=徳島市国府町=が文書館に寄贈した。紙が薄いため、同館は原本ではなく、デジタル画像にして公開することにした。寺岡さんは「ドイツ兵がベートーベン『第九』を初めて演奏して100年となる節目の年に、祖父の史料が日の目を見るようになるのは感慨深い」と話している。

 史料は閲覧室のパソコンで見ることができ、1ページ10円で印刷も可能。県指定文化財「井口家文書(上月文書)」や江戸時代末期の儒学者・新居水竹に関する文書などもデジタル画像で公開している。