水害軽減に向けて活用が検討されている大正池=吉野川市川島町桑村

 吉野川市は、既存の農業用ため池7カ所を活用して飯尾川の水害軽減を図る。池の水位を事前に下げて雨水を貯留し、河川の氾濫を抑える。甚大な豪雨被害が頻発しているのを受け、国が昨年7月に打ち出した「流域治水」の方針に沿った対策の一環。本年度内にマニュアルを整え、来年度からの運用を目指す。県内では初めての試み。

 ため池は、飯尾川支流に流れ込む敷地池(容量2万7千立方メートル)など鴨島町の2カ所と、麻名用水につながる大正池(17万5千立方メートル)や平倉池(3万1千立方メートル)など川島町5カ所で、総容量は27万4700立方メートル。

 農業用水の利水時期の後、計画的に水位を下げる「事前放流」、台風の接近などで大雨が予想される場合に水を最大限まで減らす「直前放流」を組み合わせて運用。雨水を貯め、飯尾川や麻名用水に一気に流れ込むのを抑えて被害を軽減したり、氾濫までの時間を遅らせて避難時間を確保したりする。

 最も大きい大正池は地下水をくみ上げるポンプを備えているため、水位を事前に下げた後、雨量が予想より少なくても利水への影響を抑えられ、積極的な調節ができる。

 市は周辺の雨量や川に流れ込む水量を解析し、効果的な放流方法を探り「ため池洪水調整マニュアル」を作成。管理する土地改良区と協力して運用する。土地改良区はこれまでもため池の水位調節を行っていたが、マニュアル整備によって効果を高める。

 流域治水は国や県、市町村、住民ら関係者が流域一帯の治水のあり方を考え、水害を軽減させる取り組み。気候変動による災害リスクが増大し、河川を管理する国や自治体によるダムや堤防の整備といった従来の対策だけでは防ぎ切れないとして、国土交通省が7月に方針を示した。

 飯尾川は吉野川市から石井町、徳島市へと流れ、鮎喰川や吉野川に注ぐ1級河川で、延長約26キロ。2004年の台風23号で氾濫し、多くの家屋が浸水した。市は「独自策を進めるとともに、県や石井町などとの連携を深めながら対策を一歩でも前に進めたい」としている。