新型コロナウイルスが社会経済活動に深刻な影響を与える中、徳島新聞社は四国の3新聞社・4県との共催による「四国活性化プロジェクト」を24日にオンライン開催します。テーマは「Withコロナ~新たなライフスタイルを考える~」。開催を前に、コロナ禍の中でも工夫を凝らし、前向きな活動に挑戦している4県の事例を紹介します。
岸火工品製造所(阿南市) 人の心を花火で結ぶ
それは、1日わずか2分の出来事だった。昨年5月1日から5日間、阿南市の津峯山周辺から、新型コロナウイルスの収束を願って1日5発限定の花火が打ち上げられた。
疫病退散の御利益があるとされる妖怪「アマビエ」の色をイメージした赤や青、黄の花火は自粛ムードでふさぎがちな市民の心にほのかな明かりをともした。
「江戸時代、疫病退散を願って開かれたと伝わる日本初の花火大会にちなんだ。地域住民のストレスを少しでも和らげたかった」。岸火工品製造所(阿南市新野町)の岸洋介専務(34)は、打ち上げの狙いを語る。
この花火が思わぬ反響を呼んだ。市民から「感動した」「元気をもらった」との声が、会員制交流サイト(SNS)や電話で数多く寄せられた。その後、「独自に花火を上げたい」と個人2件、団体1件から申し出があり実現。コロナ収束を願う花火の輪が広がった。岸さんは「花火が人の心を結び付ける力を持つことを改めて実感できた」と言う。
6月には、岸さんら花火師11人が中心となり、疫病退散祈願の全国一斉プロジェクトを企画。北海道から沖縄までの163業者が参加し、午後8時に各地で花火を打ち上げた。画像や動画がSNSを通じて拡散された。
「1日も早く、何千発の花火を大勢の人で見物できる世の中に戻ってほしい」。その日を願いながら、コロナ禍でも実現できるイベントを企画し、花火で市民を勇気付けていく。 (徳島新聞)