会見で飲食業を支える必要性を強調する飯泉知事=7日、県庁

 飯泉嘉門知事の釈明に納得した人はまずいないだろう。新型コロナウイルスの感染拡大中の昨年12月に、知事が県議会2会派と大人数でそれぞれ会食をしていた問題である。

 知事の言い分も理屈としてはあり得るが、「問題はない」と言えば言うほど、不信感が強まる。そんな感覚を抱く人が多いはずだ。

 会食は、知事ら県幹部が出席し、4日に最大会派・県議会自民党の24人と計46人で、16日に新風とくしまの4人と計20人で行われた。知事はいずれも十分な感染対策を取っていたとしている。

 知事の釈明をたどると、理屈をこねて正当化しようとする姿勢が目立つ。

 4日の会食の時点で、自身が会長を務める全国知事会は「飲酒を伴う懇親会」「大人数や長時間に及ぶ飲食」などに注意するよう呼び掛けていた。知事は、県内は会食での感染に注意を促している状況で、会食そのものの自粛は求めていないとした。

 16日の会食は、全国で感染が急拡大し、「5人以上」での会食の自粛が強く求められているさなかだった。菅義偉首相が世論の反発を買った8人のステーキ会食の2日後のことでもある。

 知事は、感染拡大地域で課している「Go To イート」利用時の人数制限を、県内では行っていないことを根拠に会食の正当性を主張した。

 さらに「全国知事会でも『経済を止める』というメッセージは出していない」とし、会食をやめると経済を冷え込ませてしまうと指摘。店の感染対策や会食参加者の意識を確認する意味もあったという。

 ここまでくると牽強付会(けんきょうふかい)と言わざるを得ない。

 この問題で、誰もが抱くのは「率先垂範すべき人たちがこんな時期に大勢で会食をするなんて非常識だ」という感情だろう。知事や県議の良識に疑問を投げ掛けている。

 だから、いくら理屈を並べて「問題ない」と言っても心に響かない。ましてや飲食業の支援などという理由はかえって不信を増幅させるだけだ。知事がこれで理解や納得を得られると考えたのなら、県民を甘く見ている。

 対照的だったのは県議会議長(自民)と新風とくしま会長の対応だ。2人とも「配慮が足りなかった」とし、県民に対し陳謝した。県民の感情を察してのことだろう。

 知事には「反省も謝罪もない」との批判の声が上がっている。知事の感覚が、県民の感情や思いから大きくずれているからだ。

 例えば、知事が開催を強く推したとくしまマラソン。参加申込者が締め切りまでに定員の4割しか集まらなかった。「スポーツを通して夢と希望、勇気を持ち、そこに向けて練習することに大きな意義がある」というのは分かるが、開催することが自己目的化していなかったか。コロナ感染への県民の不安をくみ取ろうとしたとは思えない。

 コロナ禍で注目されているリーダーの一人に仁坂吉伸・和歌山県知事がいる。昨年2月のクラスター発生の際、政府の方針に従わずにPCR検査を行い、感染拡大を抑えた。昨年12月、同県ホームページにこんなメッセージを載せている。

 「我々県知事は、感染症に立ち向かう保健医療行政が最高の業績を上げるために、最大限の知恵を絞るべきであります。そして、それが不幸にしてコロナの圧力に屈したら、まずは県民に謝罪すべきだろうと思います」(抜粋)

 失敗すれば謝罪をいとわないリーダーと、あれこれ言い訳し非を認めないリーダー。住民はどちらに信頼を置くだろうか。