尻から背中に鈍い痛み

 【質問】80代の男性です。5年ほど前からお尻がいつも重く、鈍い痛みがあります。長期間、湿布薬を使っていましたが改善しません。2年前からは、背中にも痛みを感じるようになりました。磁気共鳴画像装置(MRI)やエックス線検査では、腰や脊髄に異常なしとの結果でした。日常生活に支障はありませんが、鈍痛を治してすっきりしたいと願っています。

 徳島県鳴門病院整形外科(鳴門市撫養町)
 寺井智也部長

 運動療法で負担軽減を  

 【答え】腰痛は、いったん症状が軽くなっても、再発して慢性化することがあります。一般的に、痛みが3カ月以上続くと慢性腰痛と言われます。

 エックス線やMRIなどの画像検査で診断できる腰痛は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などです。腰椎椎間板ヘルニアは急に発症する場合が多く、足の神経痛を伴うことがあります。腰部脊柱管狭窄症は安静時に症状が出にくく、立ったり、歩いたりすると尻から足にかけて痛みやしびれが出ます。

 原因の特定が難しい腰痛もあります。症状があるのに、画像検査で脊椎や関節に異常が見つからない「機能的障害」と呼ばれるものです。

 機能的障害の診断は、専門的な対応が必要になります。問診では、どのような姿勢や動作で痛みが誘発されるかを確認し、圧迫による痛みの有無により障害部位を推定します。アスリートによく見られる症状ですが、加齢による脊椎や関節の動きの減少、筋力低下なども要因になります。

 機能的障害による臀部の痛みの原因として、仙腸関節障害があります。仙腸関節は、骨盤の後方にある仙骨と腸骨の間の関節です。関節といっても、靱帯で強く結び付けられているためほとんど動きません。画像検査で異常が現れることが少なく、診断が難しい疾患です。腰椎の固定術を受けた人や出産後の女性、片脚に負荷がかかるスポーツのアスリートに多いといわれます。

 今回の質問者が何らかの動作をしていて鈍痛があるなら、機能的障害による慢性腰痛が疑われます。治療法は、鎮痛剤や湿布などによる薬物療法、電気療法や温熱療法などの物理療法、コルセットを用いた装具療法があります。体幹の筋力強化や関節可動域を広げる運動療法も、改善に効果を上げています。

 腰痛の運動療法は、腹筋・背筋の運動が一般的でしたが、最近は腹横筋や多裂筋、大腰筋といった腰回りの体幹深部筋<イラスト参照>を鍛える腰痛体操がよく用いられます。腰を支える骨盤につながる大腿四頭筋やハムストリングの伸張性を高めるストレッチも、腰への負担を軽減させるために重要です。

 腰痛体操やストレッチによって筋肉や靱帯の柔軟性を高めると、関節の可動域が広がります。腰への負荷や衝撃を分散できるようになり、症状の軽減や腰痛予防につながります。主治医に相談して運動療法をしても問題がなければ、自宅でできる簡単な体操から始めてはいかがでしょうか。