「一人一人ができることをしよう」と呼び掛ける岩室医師=徳島市内

 「コロナ禍から学ぶ~偏見を持つ心に対応する~」と題して、公衆衛生・感染症予防が専門の岩室紳也医師(横浜市在住)が徳島市内で講演した。新宿など「夜の街」で行った新型コロナウイルス感染予防対策を紹介しながら「犯人探しの発想から抜け出し、一人一人ができることをしよう」と呼び掛けた。根絶ネットなど主催。要旨は次の通り。

 新型コロナウイルスが感染拡大する中、発症する人・しない人、無症状でも感染力がある人・ない人、感染しない人がいる。これは、予防措置や暴露ウイルス量、個々の免疫力などが影響すると考えられる。一般的な健康状態なら、予防措置で体内に入るウイルス量を減らすことが重要だ。

 ■感染予防  

 ウイルスは水分に包まれ、水分量の差が飛沫の大きさの差になる。大きさが違えば含まれるウイルス量も異なる。大きな飛沫に含まれるウイルス量は、より小さな飛沫エアロゾルに比べて20億倍となる。

 5マイクロメートル以上の飛沫(ひまつ)は正面に飛び、左右に大きく広がらない。500マイクロメートルの大きい飛沫は直下へ、5マイクロメートルなら2メートル以内に落下する。5マイクロメートル未満のエアロゾルは1時間程度10メートルの範囲を浮遊して落ちる。最終的に落ちたウイルスは床やテーブル、料理などの媒介物に付着し、感染力は1週間前後持続する。

 大切なのは体内への侵入経路であるのどや鼻、目の粘膜にウイルスを接触させないこと。飛沫、エアロゾル、唾液、接触(媒介物)による感染をどう防ぐか。予防策として、以下のエチケットを実践してほしい。

 ▼会話や食事時には相手の顔や料理などに飛沫をかけない▼料理や食器は他人から遠くに置く▼マスク表面を触らない▼換気は排気口に向けて空気の流れを創出する▼口にものを入れる直前と施設利用前後の手指衛生▼キス前後に何か飲む―など。マスクの材質も重要で、飛沫が出るポリウレタンやフェースシールド、(機能性に差がある)布よりも、不織布マスクを勧める。マスクはエアロゾルを増やす側面もあるので、(排気ができて飛沫を飛ばさない条件下など)可能な場合は外してもいい。

 ■誤解と偏見 

 科学的見地からの感染経路対策をすべきだが、国や自治体は感染機会(夜の街、カラオケ等)排除の啓発を推進した。感染者が出れば謝罪、「隙があった」「意識の緩み」と言う。新型コロナは「気合」で予防できるのか。こうした言動が「犯人探し」を助長してはいないだろうか。

 理不尽な機会の排除に人々は生きづらさを感じるようになり「こころを病む」人も増えた。マスク警察や自粛警察もそう。こんな時期だからこそ、信頼、つながり、「お互いさま」という意識が求められている。

 感染とは「状況」でしかない。クラスターの発生場所にいても感染しない人もいる。その差は何か、根本原因やリスクとは何か。感染した人たちから丁寧に話を聞くことで手がかりを得られるはずだ。

 感染を他人事ととらえてしまうと、誤解や偏見につながる。感染は誰もが抱えうるリスクや状況だと受け止め、自分事としてとらえてほしい。まず一度、自分が感染していない理由を考えてみてはどうだろう。

 ただ、どんなに気を付けていても、感染することはある。生活に密着している限り「ついうっかり」はある。それは誰にでも起こりうること。早く「犯人探し」の発想から抜け出し、リスクを正しく理解してほしい。日々のエチケットを積み重ねる。一人一人、できる人が、できることをしていこう。