【青の世界】滝のしぶきが凍り岩肌に無数に垂れ下がるツララが青く輝く。不純物がほとんどない氷は赤色を吸収してしまうため、このように見える。流れる水がきれいな証拠だ。

 滝にはさまざまな呼称がある。「瀑布(ばくふ)」もその一つだ。切り立った谷の岩肌を落下する水が砕ける様と、その音を表した響きのいい言葉だ。

 その「瀑布」が凍ると「氷瀑(ひょうばく)」と呼ばれる。南国の徳島県内で見ることが難しい光景だが、高度1000メートルを超える四国山地では複数の滝が厳冬期に「氷瀑」になる。

 今回、訪ねた神山町の「神通の滝」。雲早山(標高1496メートル)から流れ出る神通谷川の上流にある落差30メートルの大きな滝だ。暖冬だった昨年までの2年は凍ることがなかったが、今年1月初旬は強い寒気の影響で凍った。

 「神通の滝」が凍ると、氷が積み重なり滝つぼにまんじゅう形の氷のドームが出現する。滝の半分ほどにまで成長することがある。

 残念なことに今回は巨大なドームにはならなかったものの、神秘的な美しさを醸し出していた。しぶきが岩肌に造る無数のツララや滝つぼの表面に張った淡く緑色に輝く氷など、寒気が生み出す造形美を堪能することができた。

【滝全景】遊歩道を800メートルほど歩くと雪に覆われ凍りついた滝が姿を見せる。墨絵のようなモノトーンの世界が広がる。
【滝口】滝の最上部の落下点から勢いよく水が飛び散りながら落ちていた。水量が豊富なため、周囲が凍ってもここが凍ることはない。
【見上げる】滝の真下まで行き見上げると、凍った滝の迫力を感じる。夏場ならびしょぬれになる。
【雪に覆われた山々】遊歩道入口から見た山々。積雪が夕日に染まっていた。自然の営みとスケール感じる。
【さまざまな形】しぶきや岩肌からしみ出す水が寒気によって多様な形の氷を作り出す。光の加減で色が変化していた。