病院から届いた封筒を手にする女性。懸命に治療してくれた医療従事者に「お礼を言いたい」と言う=県内(画像の一部を加工しています)

 「もう少しであの世に行くところだった。救ってくれた病院の先生や看護師さんに『ありがとう』と伝えたい」。県内で暮らす70代女性は新型コロナウイルスに感染し、生死の境をさまよった。

 飲食店で時間を共にした知人の感染が判明し、保健所に申し出てPCR検査を受けた。結果は陽性。感染者の治療に当たる指定医療機関に入院した。当初は38度台の熱が出たぐらいで、冗談を言う元気もあった。

 だが、ウイルスは静かに肺をむしばんでいた。次第に血液中の酸素濃度が下がり、鼻から酸素吸入しても数値が改善しない。国が特例承認した治療薬「レムデシビル」も投与した。ただ、そんな状態でも自覚症状はなく、息苦しさも感じなかった。

 「肺炎がどんどん悪化している。最悪の事態も考えておいてください」。医師は女性の娘に電話でそう告げた。入院から数日で徳島大学病院に転院。その後すぐに容体が急変し、意識を失った。

 自発呼吸が困難になり、人工呼吸器を着けた。人工心肺装置「ECMO(エクモ)」は体力が持たないとして使用を見送った。「頑張れ、負けたらあかん」。家族は祈ることしかできなかった。

 幸い、女性の容体は安定し、少しずつ良くなった。目を覚ますと、防護具を身に着けた医師と看護師がいた。「今日は○月○日です」。1週間も意識を失っていた。「大変でしたね」。医師に語り掛けられても状況をすぐには理解できなかった。その後も1週間ほど頭がぼんやりとしていた。

 女性は新型コロナに感染する前に風邪をこじらせ、肺炎になりかけたという。重症化したのはその影響もあると考えている。無症状や軽症で済む人が多くいる一方で、人によっては命に関わる怖い病気だと痛感した。女性の場合、病状が重くなっても自覚がなく、「もし検査を受けていなければ手遅れになっていたかもしれない」と振り返る。

 入院中は医療スタッフが献身的に支えてくれた。腹部に激しい痛みが続いた時は医師がずっとそばで見守ってくれた。「何でも遠慮せんと言ってよ」。優しい口調に安心した。看護師も嫌な顔をせずに排せつ物まで処理してくれた。

 「先生たちにもうつるかもしれないのに。家族もいるだろうに・・・」。感染の恐怖と闘いながら患者を診る医療従事者に「感謝してもし切れない」と目頭を熱くした。

 退院後もしばらくは微熱が続いた。リハビリで体力を取り戻し、担当医や看護師にお礼を言いたくて病院を訪ねた。だが、窓口が混雑していて断念した。「医療を必要とする患者はたくさんいる。感染対策だけでも大変なのに、本当に頭が下がる」。それだけに、医療従事者を巡る風評被害や差別的な言動が残念でならない。

 女性の感染を知り、心配して励ましてくれた人がいた。ちょっとした行き違いで距離を置いていた人だった。「不安なときに温かい気持ちに触れ、すごくうれしかった。感染者を悪く言うのではなく、人を思いやる社会になってほしい」。その身になって、強く感じている。