とくしまマラソンで力走するランナー=2019年3月、阿波市

 開催の方向性が一転し、中止が急きょ決まった「とくしまマラソン」。実行委会長の飯泉嘉門知事は、逼迫(ひっぱく)する医療体制や県内感染者の急増、さらにはワクチン接種の体制整備などを挙げて「全く新しい局面を迎えている」と中止の理由を説明した。見通しが甘かったと言うほかない。

 知事は「医療従事者の負荷が大変高まっており、協力してもらうのは厳しい」とも述べたが、それは全国的に感染者が急増していた昨年12月の総会の時点で予見できたこと。当時から医療従事者の間では3月の開催を疑問視する意見が根強くあった。知事の耳にも届いていたはずで、「何を今更」との声も聞かれる。

 開催を不安視していたのは医療関係者だけではない。感染者を出したくないとの理由で徳島陸協は主催団体から辞退した。ボランティアは目標人数の確保がやっとの状況で、主役であるランナーの反応も鈍く、募集定員の半数にも満たなかった。関係者が抱く感染リスクへの不安を払拭(ふっしょく)しないままの開催決定は、県民の感覚と懸け離れていたと言わざるを得ない。

 「スポーツを通じて夢と希望、勇気を持ち、練習していくことに大きな意義がある」。昨年12月の総会で開催に疑問を抱く一部の委員にそう理解を求め、了承を取り付けた知事。「あれほど開催に意欲を見せていたのに・・・。さすがにここ最近の雰囲気を気にしたのでは」。ある県議は、県議との会食問題で「問題ない」との認識を一転させて陳謝した経緯を指摘し、世論の批判をこれ以上浴びるのは得策ではないと感じ取った上での決断との見方を示す。

 大会関係者や県民は、一連の経緯から少なからぬ不信感を抱いたに違いない。そして振り回されたランナーも、前回大会の中止以上に失望しただろう。