営繕担当の職員らが利用している部屋。同僚は全員陰性が確認された=徳島市名東町のそよかぜ病院

 昨年8月1日に職員1人の新型コロナウイルス感染が判明した徳島市の「そよかぜ病院」。医療機関の関係者が感染した県内初の事例で、県が病院名を発表した2日、病院もホームページ(HP)で状況を公表した。「不安はあったし、怖かった。でも、腹をくくるしかないと思った」。病院を運営する医療法人・清流会の久次米均理事長はそう振り返る。

 感染したのは施設の点検や補修を行う営繕担当の職員。1日午後11時ごろ、報告を受けた久次米理事長が病院に向かうと、管理職が集まっていた。県とも今後の対応についての協議を始めていた。「医療機関だから病院名は出さざるを得ないかな」と思っていたという。

 翌朝、保健所の職員がやって来て濃厚接触者の有無などを調べた。昼の休憩などで同じ部屋を使っていた同僚6人が接触者と判断された。この時点で院内感染の可能性は低かったため、「病院名を出す必要はないのではないか」との意見もあった。ただ、既に全職員や出入りの業者には伝えていた。

 久次米理事長は「悪いことをしたわけじゃないし、いまさら隠す必要もない」と公表を決めた。「患者やその家族らを安心させる方法を考えた結果であり、できる限り正確な情報を発信するのが最善策と考えた」

 県の発表がニュースなどで報じられると、案の定、病院には電話がたくさんかかってきた。多くが患者やその家族、施設利用者からで、「退院させなくてもよいか」「外来やデイサービスはしているのか」などの問い合わせだった。意外なことに嫌がらせや苦情はなかった。

 情報公開にはHPのブログが役立った。まず、2日夕に対応状況などを掲載。翌日から1週間ほど、接触者のPCR検査の結果などを記して毎日更新した。初日の閲覧数は半日で1万2千近くに達し、サーバーが3度もパンクした。ブログは広報やPRが目的と捉えていたが、危機管理上の重要性を初めて認識したという。

 マスコミの取材にも応じた久次米理事長は「ブログもそうだが、伝える手段がなければ間違ったうわさが広がったかもしれない。新聞記事を読んでよく分かったという声があり、対応を悪く言う人はいなかった。起きている状況が『分かる』ことが大切なのだと実感した。情報を公開したのは正しかったと思う」と語った。

 9月1日、徳島市のJRホテルクレメント徳島にあるレストランの従業員のコロナ感染が判明した。県は翌日の会見で、「感染対策が行われている」として店名は明かさなかった。一方、ホテルを運営するJR四国ホテルズ(高松市)は自社のHPに状況を掲載し、報道機関向けのプレスリリースを出した。

 同社事業統括部の明石守英総務課長は「ホテルやレストランは不特定多数が過ごす場所であり、お客さまの安全を第一に考えて出した答え」と、独自に公表した理由を説明する。県が勤務先などを明かさずに発表した感染者との関連を尋ねる問い合わせが何件かあったが、「プレス発表もしている。隠す必要もない」と正直に状況を伝えた。

 レストランは3日間休業した後に営業を再開した。目立った風評被害や誹謗(ひぼう)中傷は報告されていない。明石課長は言う。「安心して利用してもらうために全てオープンにした。これでお客さんが減るのは仕方ない」。