徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
日本脳炎は発病すると大変重篤な症状を示す疾患ですが、ワクチンで予防できます。今月は日本脳炎についてお話します。
日本脳炎はウイルスで発生する疾患です。ブタの血液中に存在するウイルスをコガタアカイエカが媒介して人に伝染します。西日本は多くのブタが日本脳炎ウイルスに感染しているために日本脳炎の汚染地区とされます。
ウイルスを持った蚊に刺されても日本脳炎が必ず発病する訳ではありません。感染しても発病せずに無症状で終わる、発熱だけ、無菌性髄膜炎で終わる場合もあります。また近年、日本脳炎の発生は減少しています。昭和40年以前には年間1000人程度発生していたのが最近では年間数名程に減少しています。
減少の原因はワクチンの普及、水田の減少、防虫処置の進歩、衛生環境や栄養状態の改善などが挙げられます。しかし、地球温暖化によって蚊の生息域が広くなったことで、これまで日本脳炎が発生していなかった東北や北海道でも今後発生する可能性があります。
日本脳炎は他の脳炎・脳症の症状と同様に高熱、頭痛、けいれん、意識障害などの激しい症状を示します。ウイルスに有効な治療薬はありません。経過が悪ければ死に至ることがあり、治療しても後遺症に苦しむことがあります。
日本脳炎に対しては予防接種が最も有効です。日本脳炎は乳児でも発生することがありますから、従来3歳以上児に対して行ってきた予防接種を生後6ヶ月過ぎから接種するように勧められます。BCGが終わったら1歳までに1期2回接種することです。