損害賠償を求め、徳島県を提訴した王王軒の店内=藍住町

 新型コロナウイルス感染者の立ち寄り先として徳島県が同意を得ずに店名を公表したのは財産権や営業の自由を侵害する違法行為だとして、藍住町のラーメン店「王王軒(わんわんけん)」の経営者らが5日、県に慰謝料など1100万円の損害賠償を求める訴訟を徳島地裁に起こした。

 訴状によると、昨年7月30日、感染者が訪れたとして徳島保健所の聞き取りがあった際、店名の公表を繰り返し拒否した。しかし、飯泉嘉門知事は翌31日の会見で店名を発表。その結果、客足が激減して多大な経済的打撃を被った。被害は石井町の石井店にまで及んだとしている。

 店では立ち寄った感染者以外の来店客や従業員に感染は確認されていない。「店名を公表すれば店で感染が発生したなどの風評被害や誹謗(ひぼう)中傷を招くのは容易に想定できたはずだが、県は対策を講じなかったほか、謝罪要求にも応じていない」と主張。店名公表は「社会的相当性を著しく欠き、営業の自由権や財産権を侵害した」とし、公権力行使に当たる公務員が故意または過失によって損害を加えたとしている。

 社長は「感染者が立ち寄っただけなのに、なぜ店名を公表したのか。素直に謝罪してくれれば裁判は起こしていなかった。同様の被害が起きないよう裁判所に正してほしい」とコメント。主張が認められた場合、弁護士費用を除いた全額をコロナ禍で苦しむ人のために寄付する考えだという。

 県保健福祉部長は「訴状が届いていないため、コメントは控える」とした。