経費負担の問題を巡り、税金の投入は「市民や市議会に説明がつかない」などと述べる阿波おどり実行委員会委員長の内藤市長=1月28日、徳島市役所

 新型コロナウイルスの影響で中止となった昨夏の徳島市の阿波踊りの経費負担を巡り、主催者である阿波おどり実行委員会の事務局と、運営業務を担う民間3社共同事業体が対立している。事業体が開催準備費用の分担や固定納付金の免除を求めているのに対し、事務局を務める市は「赤字補塡(ほてん)に税金は投入できない」として応じる気配がない。両者とも今夏の踊り開催には前向きな姿勢を示すものの、足並みの乱れに踊り手は不信感を募らせている。

 実行委は、踊り事業の赤字を市の税金で補塡する従来の仕組みを改めるため、2019年度から運営業務に民間委託方式を導入。19年4月、キョードー東京(東京)とキョードーファクトリー(同)、ネオビエント(北島町)で構成する事業体と契約を結んだ。

 契約では▽事業収支の責任は民間事業者が全て負う▽事業収支に関係なく実行委に毎年500万円を納付する―ことなどを義務付けた。ただ、不可抗力による損害や増加費用が生じた場合は、実行委と事業体が経費負担に関する協議を行うとしている。

 事業体は、コロナは不可抗力に該当するとして、中止決定後の昨年4月に開かれた実行委の会合で契約に基づく協議を申し入れた。実行委は事務局と事業体が費用の詳細を詰めた後に判断するとし、事務局と事業体は担当者レベルで話し合いを進めてきた。

 そして今年1月12日、事務局長を務める市の横山昇経済部長は「開催準備に要した約2100万円の負担には応じられない。納付金500万円の支払いなどを求める」との意向を事業体に伝えた。理由について、横山事務局長は「実行委は資金を持っていない。税金は投入しないという前提で民間に委託している」と説明する。

 事業体はこれを「受け入れられない」として、契約相手である実行委との直接協議を求める申し入れ書を内藤佐和子実行委員長(市長)に提出した。「実行委の会合で事務局の意向がそのまま反映される恐れがあるため、直接協議の場を要望した」と主張。今後は代理人を立てて対応する方針で、ネオビエントの藍原理津子社長は「訴訟をしたいわけではない。あくまで平行線の話し合いを進展させるために第三者の代理人を立てた」と話す。

 横山事務局長は「事業体に伝えた内容は事務局としての意見。協議は継続中との認識で、両者が意見を出し合って落としどころを見つけていく段階だった」と述べ、最終結論ではないと強調する。ただ、内藤実行委員長も税金による赤字補塡は「市民や市議会に説明がつかない」と難色を示しており、事務局の見解に同調する姿勢を見せている。

 ある法曹関係者は今回の問題について、契約締結後に予測不能な社会的事情が発生し、当事者間の公平に反する結果となる場合に契約内容の変更などが認められる「事情変更の原則」が適用されるとみる。「コロナは誰もが予測不能で大規模災害レベルだ」と言い、税金投入についても、飲食業者らへの行政支援が積極的に行われている例を挙げて「市は弾力的に考えるべきだ」と指摘する。

 今後、実行委で協議される見通しだが、横山事務局長は「実行委は一切お金を払わないという前提でつくられている。そもそものスキーム(仕組み)に無理があると言われたら、そうかもしれない」とも述べており、どのような結果になるかは不透明だ。

 今夏の阿波踊りまで半年を切った。事務局は開催を前提とし、事業体も「経費問題とは切り離して準備を進める」としているが、両者の対立が長引けば大きな影響を及ぼすのは必至だ。今月10日に開かれた事務局と踊り団体との意見交換の場で、踊り手の一人は「現状のままで運営がうまくできるのか疑わしい」と話し、早期解決を訴えた。