1998年4月に明石海峡大橋が開通し、徳島県から多くの人が本州に出掛けるようになった。帰りは夜になることが多く、淡路島を通過して大鳴門橋主塔のフラッシュライトを目にすると、「もんてきた」と実感する。徳島のランドマークであり、玄関だ。
日が沈んで間もなく、兵庫県南あわじ市にある「うずの丘・大鳴門橋記念館」から鳴門海峡を撮影した。鳴門市の大毛島に建つホテルの明かりや道路の街灯が輝き、水面にも長く伸びる。
ひときわ存在感を放つのが大鳴門橋。青みがかった阿讃山脈を背景に車のライトが連なり、徳島と淡路島や本州を結ぶ大動脈であることを浮かび上がらせる。海峡は狭く見え、手を伸ばせば四国まで届くかのように感じる。
橋が完成したのは1985年6月8日。全長1629㍍で二つの主塔間の長さは876㍍。当時、東洋一のつり橋といわれた。汽船やフェリーボートが往来していた光景は、思い出すのも難しいほど遠い昔になった。
鳴門海峡は姿を大きく変えたが、古里から離れ、古里に戻る空間に変わりはない。県民が通るたびに、心を揺らす場所である。