徳島駅前周辺に、何を求めていますか。そごう徳島店の撤退で中心街の空洞化が懸念されていますが、どんなエリアになったら足を運ぶでしょう。阿南市出身の建築家吉原弘記さん=ニューヨーク市在住=から、「緑」を生かした都市計画を提言する寄稿が編集局に届きました。この提案を基に、徳島市公園緑地課やボランティアにも意見を聞いてみました。「緑化はこれまでもやってきたよね。なぜいまさら」と思う人も多いかも。でも緑には、街を飾ること以上の効果があるようです。緑が持つ可能性を考えてみませんか。

網状に街路樹を植え施設つなぐ

 これまでの都市計画の原理は端的に言って、目的の施設や催しに最短で行き、最短で帰ってくることだった。買い物は最速ルートで行って駐車場を見つけ、終わればさっさと帰る。仕事や用事があっても、済めば急いで帰る。それを可能にするのが都市計画だった。

 だが、人が都市に集う理由は消費と用を足すためだけなのか。都市がこれから発展する鍵は、人々が街の中をいかに楽しく歩き回れるかにあるのではないだろうか。街で買い物をするのはその商品を手に入れるためだけでなく、その過程を楽しみ、感じのいい雰囲気に触れたいからだと思う。そんな観点から徳島市の中心街を歩いてみよう。

 藍場浜公園の脇の歩道を歩く。しかし、公園の中は見えず、誘われない。入ると、花壇がある以外は裸の土地が広がる。聞けば、阿波踊りの桟敷をつくるためらしい。数日間のイベントのために、街のたたずまいが犠牲になっている。

 新町川ボードウオークは素晴らしい。…ずっと行くと次第にうらぶれてくる。それに暑い夏場、木陰はないものか!

 旧徳島市文化センターへはよく行った。徳島駅からは方角を告げるような景観の演出が何もなく、雑ぱくな街並みの中、何とか立体交差までたどり着く。それから工場の中のような細い階段や陸橋を上がったり下がったり、このルートで良いのか心配になる。この道が楽しければ、コンサートの前の浮き浮きするイントロになったのだが。

 大切なのは、人々が目的なしにもぶらぶらと気持ちよく歩ける街をつくっていけるかどうか。そのためには、網状に街路樹が植わった「緑道」を張り巡らし、散在した公共施設や商業地の間にリンクをつくることが有効であると思う。

緑道化されたアミコビル前の道路のイメージ図(吉原さん作成)
アミコビル前の道路の現状

 

 緑道化は街に憩いの場を生み、場所と場所をつなぐ。並木道はそこに面する建物や景色を中に取り込み、沿道の施設へ人々をいざなう。街全体が公園のようになれば、人々がそこにとどまりたくなる。カフェやしゃれたお店も商売したくなるだろう。新県立ホールもこの緑道化の中に組み込まなければならない。

 ここで提案しているのは、「飾り」としての緑化ではない。都市の骨格となる緑道だ。それは街全体の景観と構造を変えるが、一本の通りから始められる。

街路樹を生かしたフランス・エクサンプロバンスの町並み(吉原さん提供)

 欧州の旧市街は中世からの町並みが観光資源となっている。しかし、日本では建築物は頻繁に建て替えられ、30年で街はガラリと変わる。そこで緑である。木々は年々成長し、緑は増える。魅力的な街の印象が醸成される。「緑の街」はそれ自体が観光資源になる。

 1個や2個の目玉店を誘致したり、年に1度阿波踊りを開いたりしても、それだけで徳島に活気が戻るとは思われない。JRの高架化も同様だ。経済効果や便利さだけを目指した近視眼的な計画では、活気は持続しない。人々が心の奥底で街に何を求めているのか、出発点から問い直して構想してはどうだろう。

 吉原さんの提案詳細は、こちらから〈https://www.yoshiharamckee.com/PROJECTS/civic/tokushima.html

 よしはら・ひろき 1956年、阿南市生まれ。名古屋大大学院建築学研究科修了。東京国際フォーラムのホールBとDの設計を担当。物理学博士。