旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らに不妊手術が強制された問題で、徳島県内に住む70代女性が10代だった59年、知的障害を理由に手術を受けたとする記録が、女性が入所する施設で見つかった。施設ではこの女性以外にも、時期などは明記されていないものの、入所者と退所者計16人が手術を受けたとする記録がある。県内で個人の詳しい記録の存在が分かったのは2例目。
70代女性の記録は、既往症や予防接種の有無などを記した「健康管理簿」に残っていた。60年代に入所した際、保護者らから聞き取った内容が記入されている。管理簿には優生手術の有無を記入する欄があり、そこには「済」と書かれ、備考欄には「59年5月に手術を済ませた」という趣旨の文言があった。
このほか、入所者の女性10人(80代2人、70代6人、60代2人)と、既に退居した女性6人の優生手術の欄にも「済」と記載されていた。時期などの具体的記述はない。
施設責任者によると、いずれの女性にも下腹部に手術痕がある。重度の障害で話ができない人もいて、手術については話していないという。
施設は国からの依頼を受け、今月に入り調査を始めた。女性の管理簿は調べ終え、現在、男性の管理簿を調べている。管理簿は入居者のほか、一部の退去者分も残っている。
施設責任者は「入所者には通常の意思疎通が難しい人もいる。本人の意思を確認しないまま、当たり前のように手術が行われていたのだと考えると、本当に悲しい。人権を無視している」と話した。
県内では別の施設でも、入所していた女性(故人)が17歳だった65年に施術されたとする記録がある。旧厚生省の資料には、51~74年に県内で391人が手術を受けたとの記録が残るものの、詳しい状況が記された資料は残っていない。