日独友好のシンボルとして知られる鳴門市大麻町桧の「ばんどうの鐘」が、タイマーの故障で昨夏から音が鳴っていない。市は代替品を探しているが、旧式のため見つからずに苦慮している。ベートーベン交響曲「第九」のアジア初演100周年の節目が迫る時期だけに、市民からは残念がる声が上がっている。
鐘はドイツ村公園の丘陵地(約130メートル)にあり、午前6時、正午、午後6時の1日3回、タイマーで動くつちが打ち鳴らしていた。昨年6月、「音が鳴っていない」との声が寄せられ、市が修理したが、2カ月ほどたつと誤作動を繰り返すようになり、その後は動作を止めている。
タイマーはアナログ式で、すでに生産は終了している。10年以上前に主流のデジタル式に切り替えたが、雷による過電流ですぐに壊れたという経緯がある。
市は雷の影響を受けにくいアナログ式での交換を計画し、業者に探してもらったり、廃校舎の時計など使わなくなった類似品がないか近隣自治体に尋ねたりしているが、見つかっていない。
6月1日には「第九」初演100周年の記念演奏会や銅像除幕式が近くの市ドイツ館前広場で午後6時前後に開かれる。地元の自営業田渕豊さん(76)は「友愛と平和への願いがこもった穏やかな音色で、地域には欠かせない。記念行事に参加するドイツの人にも聞いてもらいたいのだが」と話す。
市経済建設部の氏橋通泰部長は「代替品が見つかればすぐに直したい。類似品の情報を寄せてもらえたらありがたい」と呼び掛けている。
≪ばんどうの鐘≫ ドイツ・リューネブルク市との姉妹都市盟約締結を記念し、友好と平和のシンボルとして市が1983年に建てた。鐘楼の高さは12・6メートルで、直径約50センチの鐘はドイツで鋳造し、寄贈された。事業費の一部には、元捕虜や子孫らから寄せられた浄財を当てた。