被災者でごった返す避難所。プライバシーが十分確保されていない環境の中、立場の弱い女性に付け込んだ性暴力が起きていた(写真と本文は関係ありません)=2011年3月17日、岩手県陸前高田市(岩手日報提供)

 2011年の東日本大震災時、避難所や屋外で、女性や子どもに対する性暴力が起きていた。災害時の性暴力は26年前の阪神大震災でも指摘されながら社会問題化することはなく、東日本大震災でも繰り返された。災害下では平時に増して、性被害が潜在化しやすい。被害者はなぜ沈黙を強いられるのか。(全3ページ)

立場の弱さ声上げられず

 全国の女性支援団体などでつくる「東日本大震災女性支援ネットワーク」が実施した「災害・復興時における女性と子どもへの暴力に関する調査」では、被災地での82件の被害が報告されている。被害者の9割以上が女性だった。夫婦や内縁関係の間で起こったドメスティックバイオレンス(DV)事案以外は37件。このうち7割に当たる26件が避難所や親戚宅など、被災して避難、転居した場所で発生していた。

 37件の被害内容は「わいせつ行為、性的嫌がらせ」が19件で最多。「強姦(ごうかん)・強姦未遂など同意のない性交の強要」も10件あった。

 詳しい内容は「避難所で夜になると男の人が毛布に入ってくる」「支援物資を渡す見返りに性行為を強要された」など。避難所で女性専用スペースがない中、着替えをのぞかれたとの報告もあった。

 子どもが被害を受けたケースは11件。「体を触られた」「キスされた」のほか、避難所で男児が男性に下着を脱がされる事案などがあった。

 加害者は「避難所の住人やリーダー」が19件で最も多く、「支援者・ボランティア」が6件と続く。被災後に身を寄せざるを得なかった場所で、身近な人や、助けてもらえるはずの支援者から性暴力を受けた実態が浮き彫りになっている。

 一方、NPO法人「全国シェルターネット」がDVや性暴力の防止と被害者支援を目的に実施した「パープルホットライン」の被災地専用ラインには、12年3月までに2万件以上の相談が寄せられた。調査で明らかになった被害は、氷山の一角とみられる。

 調査に参加した認定NPO法人「ウィメンズネットこうべ」(神戸市)の正井禮子代表は、阪神大震災時にも性暴力被害の相談を多数受けた。自宅の倒壊により仮設住宅に住み、近所の男性から性被害を受けたシングルマザーは「そこでしか生きていけない時に、誰にそれを語れというのですか?」と話したという。

 東日本大震災で津波に見舞われた沿岸部には、家父長制が根強く残る。女性支援に取り組む一般社団法人「GEN・J」(盛岡市)の田端八重子代表は「地域コミュニティーのつながりが強い中、うわさはすぐ広まり、性被害に遭った女性を『きずもの』と揶揄するようなゆがんだ考えがいまだに残る」と指摘する。

 居場所を失うという危機感や男女格差による立場の弱さ、被害者側に非があるかのような女性蔑視的な考え方。さまざまな要因が絡み合い、女性たちの口はふさがれた。

 災害・復興時における女性と子どもへの暴力に関する調査報告書 「東日本大震災女性支援ネットワーク」が、米ミシガン大の吉浜美恵子教授らと共に実施した。性暴力被害を直接見聞きした支援者や被害当事者、被害者の診療に関わった人らに調査票を配布。2011年10月から12年12月までの間に回収した。女性支援ネットワークは14年3月末に解散し、活動は「減災と男女共同参画研修推進センター」に引き継がれている。