フランス菊を咲かせて震災の教訓を伝える活動に取り組む佐藤さん=吉野川市鴨島町麻植塚の「和みギャラリー風の庵」

 東日本大震災で犠牲になった幼稚園児をしのぶ花を育て、命の大切さや防災を伝える活動に、徳島県吉野川市鴨島町の佐藤久美子さん(68)=岩手県出身=が参加している。ボランティアとして被災地に何度も足を運んだ佐藤さんは、震災の記憶を伝え、南海トラフ巨大地震に備えて県内の防災意識向上につなげようと賛同者を募っている。

 活動は2016年に始まった「アイリンブループロジェクト」。白い花を咲かせるフランス菊を植え、震災の教訓を伝える取り組みだ。フランス菊は、宮城県石巻市で被害に遭った佐藤愛梨ちゃん=当時(6)=が亡くなった場所で15年に咲いていた花。関係者から「あいりちゃん」と呼ばれるようになった。種や苗を増やして防災を呼び掛ける活動が全国に広がっている。

 佐藤さんは震災後、当時住んでいた愛知県から被災地にボランティアとして出向いた。18年、夫の実家がある吉野川市に転居。震災10年の節目に被災地訪問を検討していたが、新型コロナウイルスが収束せず断念した。「何かできることはないか」と考えていたところテレビ番組で活動を知り、協力を申し出た。2月中旬に主催団体から種と苗が届いた。

 巨大地震が予想される徳島で防災意識を高める必要性を感じており、自身で花を咲かせて啓発するほか、賛同者に種を分けて育ててもらう。「花を育てるだけでなく、活動の意義を伝えてくれる人に譲りたい」と呼び掛けている。

 プロジェクトでは愛梨ちゃんと家族をモデルにした短編映画を作っており、佐藤さんは県内での上映も検討している。問い合わせは佐藤さん<電080(6961)5408>。

■記憶や防災意識希薄化を懸念

 佐藤さんは大震災発生直後、愛知県から東北に入り、支援に携わった。

 2カ月に1回ほど夜行バスに乗り、宮城県石巻市や気仙沼市、女川町などを訪れた。現地では交流のあった千葉県のNPO法人メンバーらと共に活動。津波で被害を受けた家屋から泥をかき出し、避難所では炊き出しで温かい食事を提供した。

 義援金や物資が行き渡っていないと知り、被災者から必要な物を聞き取った。愛知県で知人に呼び掛けて寄付金を集め、調達して届けた。

 被災者が避難所から仮設住宅、新たな住居に移っていくにつれて形を工夫。交流の場を設けようと、集会所でたこ焼きパーティーを開き、みんなで焼きながらコミュニケーションを図った。

 石巻市に行くと、児童が津波の犠牲になった大川小学校を必ず訪れる。冥福を祈るとともに、尊い命が失われた教訓を生かさなければと心に刻む。昨年からは新型コロナウイルスの影響で現地に行けていないが、何かの形で支援は続けるつもりだ。

 震災発生から10年。被災地と関わる人が減ってきたと感じる。「節目を過ぎれば、関心や防災意識も薄れていくのではないか」と懸念する。震災後も日本各地で大きな災害が起こっている。「いつどこで起こるか分からない。犠牲になった命を無駄にしないため一人一人が命を守る意識を持ってほしい」と願う。