後半、徳島・渡井(手前左)のシュートがネットを揺らすもオフサイドの判定でノーゴール=鳴門ポカリスエットスタジアム

 電光石火の先制点と前半の出来にJ1ホーム初勝利を確信し、書き進めていた原稿をバックスペースを長押しして消す。何度も経験してきた作業とはいえ、書き直す筆の進みは概して遅くなる。

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 それにしても後味が悪い。DFジエゴのハンドでPKを献上し、逆転を許した。1点を追う終盤、今季から導入されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が介入するシーンが2度あったが、徳島の有利となるように判定は覆らなかった。決して不当なものではなかったが、ツキにも見放された気がした。

 何より、終了直前に強烈なシュートを至近距離で頭に受けた渡井がピッチに倒れて動けなくなった。相手の急所を突く攻めをけん引し、ヒーローになるはずだった背番号10が、担架で運び出される姿を見守るサポーターの心情はいかばかりか。大事に至っていないことを祈るしかない。

 前節の川崎戦を除いては、ボールを保持して主導権を握る徳島らしさを発揮し、常に先手を取ってきた。ただ、後半は的確な修正を施してくるのがJ1勢。同じ昇格組の福岡でさえも、後半は立ち位置とプレスのかけ方を変えて徳島のボール回しを封じてきた。

 運動量が落ちてくる後半、修正してきた相手を再び上回るパワーと戦略がないと勝ち切れないという厳しい現実を突き付けられている。その点をボランチ藤田譲に聞くと「風下に立った際に人と人の距離を近くするのか、簡単に前に蹴ってまずは守備から入るのかを決めておく必要がある。自分にもチームにも迷いがある」と言うのだ。

 状況変化への対応力。J1経験者の少ない若いチームには難題だが、ベンチワークも含めて、そこをクリアしないと望む結果は得られない。それでも19歳の藤田譲の抜群のボール奪取力や、21歳の渡井、20歳の宮代と藤原がドリブルで突き進む姿にほれぼれした人も多いはずだ。ポテンシャルの高い個人がさらに成長し、チームとしても成熟度を上げていく。勝利原稿はもちろん、その過程を書き残していく楽しみもある。