地域継続計画に基づく抜き打ちの訓練で、高台へと逃げる住民=2月21日、美波町伊座利

 南海トラフ巨大地震で被害が想定される徳島県美波町伊座利地区で、伊座利漁協が漁業漁村版地域継続計画を策定し、防災活動や地域づくりを進めている。計画では人口減少や移動手段の確保などの課題を挙げたほか、津波被害を受けた後でも漁業を継続できるよう予備の漁船を陸上に避難させておくなど、災害発生前の行動指針を示している。計画に基づき、事前告知なしの住民避難訓練も行われた。

 計画は全18ページ。伊座利地区に拠点を置いて地域活性化に関わる東京大生産技術研究所の加藤孝明教授に助言を仰ぐなどし、1年がかりで昨年3月に策定した。

 「地区の現状と課題」の項目では、人口減少や産業・医療分野の問題点を抽出。「漁港施設は老朽化しており、改良と長寿命化対策が早急に必要」「地区へ入る路線バスはなく、住民生活の維持と新しい人・物の流れを起こす移動手段の確保が課題」などと指摘した。

 このうち人口減少については、交流人口の拡大や戦略的な情報発信を具体的な対策に挙げ「伊座利地区と関わりを持つ『いざり人』を各地に増やして人口10万人の漁村を目指す」などとしている。

 南海トラフ地震をにらんだ行動指針では、漁船、漁具の流失や損壊、倒木、土砂崩れによる道路の寸断といった被害を想定。予備の漁船を高台移転するとしたほか、道路改良を町や県に要望するなどとした。2月21日には計画の一環で抜き打ちの住民避難訓練を実施。ピザ作り体験会に参加していた約50人が、津波を知らせるサイレンを聞いて高台に避難した。

 漁協組合長で伊座利の未来を考える推進協議会の事務局長を務める草野裕作さん(69)は「自分の地域のことは自分たちで考えなければいけない。指針があれば同じ方向を向いて進める」と計画の意義を強調。避難訓練について「堅苦しい形を取ると住民は参加しないし、続かない。『楽しく適当に』の伊座利らしさを大事にして続けたい」と話した。

 加藤教授は「漁協がこのような計画を作った話は聞いたことがない。地域の数少ない産業である漁業に携わるメンバーが、自分たちで一から作り上げたことに意義がある」としている。