南海トラフ巨大地震など大規模災害の発生時、自治体職員はいち早く役所に登庁して災害対応を担うことになるが、県内の7市町村では30%を超える職員が、勤務している自治体外に住んでいる実態が徳島新聞の調べで分かった。全国では自治体内居住の義務を職員服務規程で定めるケースもあるものの、県内からは憲法が保障する「居住移転の自由」との間で悩む声が聞かれた。

 県内24市町村に調査票を送り、2020年4月1日時点の全正規職員について尋ねた。松茂、北島、藍住、板野の4町を除く20市町村が回答。4町はそろって「職員のプライバシー保護」を理由に、町外に住む職員数を非開示とした。

 職員の自治体外居住率が最も高かったのは佐那河内村で、66・7%。これに小松島市(54・6%)、神山町(52・3%)が続き、この3市町村では過半数の職員が勤務自治体外に住んでいた。他に30%を超えたのは勝浦(44・6%)、美波(32・8%)、つるぎ(32・7%)、石井(32・1%)の4町。徳島市の近隣自治体や人口減少が深刻な地域が並んだ。

 20市町村の自治体外居住者率の平均は28・7%。本年度の新規採用者に限ると平均38・1%で、30%を超えるのは10市町村。うち5市町村では50%を超え、自治体外居住率の上昇傾向が見て取れる。

 少子化が進む佐那河内村と神山町は、村内や町内から職員採用に応募する人が少ないため、町外の採用者が増えている。佐那河内村にはアパートなどの賃貸住宅がなく、村の担当者は「村内居住を促したいが、住宅確保が難しい」と悩む。神山町では高校進学時に町を離れて下宿するケースが多数あり、町内に若者が残りにくいという。

 小松島市では、徳島、阿南両市に住む職員が多く、両市に挟まれたロケーションが影響しているとみられる。つるぎ町は、町立半田病院の職員を除くと町外居住率は11・5%に下がる。「医師や看護師の人材を確保するには、居住地を限定するのは難しい」と町の担当者は説明した。

 全国では岡山県総社市など職員服務規程で市内居住義務を定めた自治体もあるが、県内にはない。憲法は居住移転の自由を保障しており、家族の都合で転居せざるを得ないケースもある。県内の複数の自治体担当者からは「居住地の強制はできない」「地域の魅力を発信し、居住を希望してもらうしかない」と悩む声が聞かれた。

 徳島市の総務部長や副市長などを歴任した本田利広四国大教授(地方自治論)は「まずは職員が『住民の安全を守る』という自覚を持たねばならない。自治体は地域防災計画を絵に描いた餅にしないため、必要な職員を確保する義務がある。確保できないなら管理職に自治体内居住を義務付けるなど、臨機応変な対応が必要だ」と話した。

 被災リスク分散も

 自治体職員が勤務先の自治体外に住むことは、災害発生時にデメリットばかりなのか。この点を巡っては今回の調査でもさまざまな意見が聞かれた。

 南海トラフ巨大地震で津波の被害が想定される美波町の担当者は「発災後一定時間内に職員が集まれるかどうか懸念もある一方、町外に住む職員は被災リスクが低く、復興に対応しやすいという側面もある。一長一短ある」と話す。

 また、職員の居住地によっては、同じ自治体内より隣接自治体からの方が役所に早く到着できるケースもある。例えば、小松島市役所がある同市横須町まで市内の和田島町からは7キロ程度あるが、徳島市大原町からだと5キロ程度。小松島市の担当者は「年度当初に全職員を対象に車を使わず市役所に来る手段と所要時間を報告してもらい、実態把握している」と言う。

 ただ、職員が勤務先の自治体内に住んでいれば、自身も居住者として域内の被害状況を登庁途中にも把握できるという利点がある。南海トラフ巨大地震で津波被害が想定される地域の職員からは「勤務自治体に住めば、地域の課題が自分事になる。仕事が子や孫の暮らしにつながっていく」という意見も聞かれた。