時々参加する「子ども映画教室」で、いつもの通学路を撮影してもらう。子どもたちは驚くそうだ。「撮る」ことで、初めて見えてくるものがたくさんある。「カメラは世界を発見する道具」とは、映画監督の是枝裕和さんの言葉である

 歌人の永田和宏さんの対談集「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」(文春新書)にあった。見ているようでいても、本当は見ていない。平々凡々とした日常も、まとわりついた先入観を振りほどけば、別の輪郭が浮かんでくる

 カンヌ国際映画祭で、是枝さんの「万引き家族」が最高賞「パルムドール」を受賞した。邦画としては21年ぶりとなる。樹木希林さんが演じる祖母の年金を頼りに、子どもに万引させながら暮らす貧しい一家を通して、家族や社会のありようを問う

 年金不正受給事件で個人を断罪するような報道の在り方、東日本大震災後の絆や家族の語られ方に違和感を覚えたのが、製作のきっかけだという

 「当たり前だと思われている価値観みたいなものに対し、そうではないものを描いてみたかった」。不正は悪い、絆は美しい。それはそうに違いないけれど、いつもいつも決まり切った型に流し込んでいては、見逃す事実も多いのだろう

 家族を描いて定評のある監督が、どこへいざなってくれるのか。来月の公開が待ち遠しい。